2025年最新版「定期報告改正」について知っておくべき内容とポイントについて解説!

2025年7月に施行される「定期報告の改正」により、12条点検の基準や報告様式が変わります。この記事では、定期報告の基礎知識から、2024年6月に告示された改正内容、特定建築物・建築設備・防火設備の各定期検査に関する変更点を解説します。改正により考えられる影響についても解説しているので、今後適切な点検・報告をおこなうための参考にしてください。

建築基準法第12条にもとづく定期報告(12条点検)は、建物の安全性を維持するために欠かせない制度です。

2025年7月の法改正では、調査方法の追加や変更、報告様式の見直しなど、点検業務に影響を与える改正が予定されています。

特に、建築物の定期調査や建築設備、防火設備、昇降機の検査に関する新たな追加・確認事項が改正されるため、最新情報を正しく理解する必要があります。

この記事では、2024年6月に告示された内容をもとに、具体的な箇所や影響について解説します。

定期報告の改正に備えて、適切な対応をしましょう。

2025年7月施行予定の定期報告改正について

今回予定されている「定期報告の改正」では、建築物の定期調査、建築設備・防火設備・昇降機の定期検査における調査・検査項目が変更されます。

ここでは、下記の2点について解説します。

・定期報告(12条点検)に関する基礎知識

・2024年6月告示の定期報告改正の概要

順にみていきましょう。

定期報告(12条点検)に関する基礎知識

建築基準法第12条にもとづく定期報告(12条点検)は、特定の建築物や設備について定期的に点検をおこない、その結果を自治体へ報告する制度です。

この制度の目的は、建物や設備の安全を保ち、事故や災害を未然に防ぐことにあります。

定期報告の種類は、下記の4つです。

・特定建築物定期調査:建物の本体(屋上や屋根、外壁、防火区画、床、天井など)や敷地、地盤、避難施設などについて、構造や設備の劣化状況や安全性を調査するもの・建築設備定期検査:建物に付帯する換気設備や非常用照明、給排水設備などの安全性を確認するもの・防火設備定期検査:防火シャッターや防火扉、耐火スクリーンなどの防火設備の稼働状況を確認するもの・昇降機等定期検査:昇降機等定期検査はすべての建物(かごが住戸の中だけを昇降するものは対象外)を対象として、エレベーターやエスカレーター、小荷物専用昇降機、遊戯施設などに対しておこなうもの

これらの調査・検査結果は、定められた報告書様式にもとづいて作成し、所管行政庁に提出する義務があります。

報告を怠ると、行政指導や罰則の対象となるため適切な管理が求められます。

2024年6月告示の定期報告改正の概要

今回改正された内容は、主に下記の4点です。

・特定建築物定期調査・建築設備定期検査・防火設備定期検査・報告書様式

今回の改正された内容を正しく理解し、適切な対応が求められます。

改正のポイントは下記のとおりです。

1.検査の合理化(重複の解消)2.新技術の活用3.基準の不整合を解除

1.検査の合理化に関しては、特定建築物の定期調査と下記の検査の重複部分を改正しています。

・建築設備:「換気設備」「排煙設備」などの機能確認を一括実施

・昇降機:「非常用エレベーター」の稼働確認を昇降機検査で実施

・防火設備:「常時閉鎖式防火扉」の劣化・稼働確認を防火設備検査で統合

2.新技術の活用に関して新しく許可されたのは、赤外線装置・センサーなどを活用した「目視または類する方法」での確認です。

また、非常用照明の予備電源の検査は自動検査機能があり、LED使用の場合は、非常点灯が終わったあとの機器の表示などによるチェックを可能としています。

3.基準の不整合の解除においては、防火設備の検査対象を「人の通行部分」に限定し、不要な検査項目を削除(例:戸の閉鎖力測定、小荷物専用昇降機の点検コンセント確認など)しています。

なお、法改正に関する新旧前後表は、下記の国土交通省のWebサイトをご覧ください。

参照:国土交通省「国土交通省告示第九百七十四号」


特定建築物定期調査の主な5つの変更点

特定建築物定期調査の主な変更点は下記の5点です。

1.調査方法の追加
2.防火設備定期検査との重複箇所の変更
3.スプリンクラー設備に関する確認事項の追加
4.建築設備等定期検査との重複箇所の変更
5.昇降機定期検査との重複箇所の変更

順にみていきましょう。

1.調査方法の追加

特定建築物定期調査の方法は、「目視により確認」から「目視またはこれに類する方法で確認する」と追加・変更されています。

調査項目改正前改正後
1 敷地及び地盤(1)地盤目視により確認する目視またはこれに類する方法で確認する

改正後の「これに類する方法」は、「定期報告制度における赤外線調査による外壁調査ガイドライン」に沿った調査が該当します。

また、ファイバースコープや赤外線装置・可視カメラ・拡大鏡・双眼鏡などを使った確認も「これに類する方法」に含まれます。


2.防火設備定期検査との重複箇所の変更

特定建築物定期調査と防火設備定期検査の重複箇所が削除・変更されています。

主な一例を紹介します。

なお、カッコ内は法改正前の調査項目のナンバーです。

調査項目改正前改正後
4 建築物の内部防火設備 昭和48年建設省告示第2563号第1第1号に規定する基準についての適合状況(旧28)常時閉鎖した状態にある防火扉または戸においては、各階の主な常閉防火扉等の閉鎖時間を(以下略)削除



なお、各階の主要な「常時閉鎖式防火扉」に関して、上記を含めた各項目は防火設備定期検査でおこなうように変更されています。

・運動エネルギー等

・本体と枠の劣化や損傷の状況

・防火扉等が作動するか

・物品の放置の状況

・固定の状況の確認

変更点が多く、調査項目なども混同しやすいので注意が必要です。

3.スプリンクラー設備に関する確認事項の追加

スプリンクラー設備に関しては、新たに確認事項が定められています。

調査項目改正前改正後
4 建築物の内部(36)(37)スプリンクラー設備なし(36)スプリンクラー設備の設置の状況(37)スプリンクラー設置の劣化や損傷の状況

スプリンクラーの検査においては、2024年4月1日以前のスプリンクラー設備に関しては調査の対象外です。

4.建築設備等定期検査との重複箇所の変更

特定建築物定期調査と建築設備等定期検査の重複箇所が削除されています。

調査項目改正前改正後
4 建築物の内部(旧42)換気設備の作動状況(旧43)換気の妨げとなる物品放置状況削除
調査項目改正前改正後
5 避難施設(旧21)付室等の排煙設備の作動の状況(旧26)可動式防煙壁の作動の状況(旧28)排煙設備の作動の状況(旧34)乗降ロビーなどの排煙設備作動状況(旧39)非常用照明装置の作動状況(旧40)照明を妨げる物品の放置の状況削除

上記の表の改正前に記載してある、設備の作動状況の確認や設備・装置の物品の放置状況確認は、今後建築設備等定期検査でおこないます。

ただし、自然排煙口の稼働検査に関しては、これまでどおり特定建築物定期調査にて実施するので注意しましょう。

5.昇降機定期検査との重複箇所の変更

特定建築物定期調査と昇降機定期検査で重複する箇所が削除されています。

調査項目改正前改正後
5 避難施設(旧37)非常用エレベーターの作動状況削除

非常用エレベーターの稼働状況は、今後昇降機定期検査での確認となります。

建築設備定期検査の主な3つの変更点

建築設備定期検査の主な変更点は下記の3点です。

1.調査方法の追加

2.換気設備の検査に関する変更

3.非常用照明装置の検査に関する変更

順にみていきましょう。

1.調査方法の追加

調査項目改正前改正後
1 法第28条第2項又は第3項の規定に基づき換気設備が設けられた居室(換気設備を設けるべき調理室等を除く。)(1)目視により確認する目視またはこれに類する方法

改正後の「目視またはこれに類する方法」においては、「特定建築物定期調査の調査方法の追加」で記載した内容と同様です。

2.換気設備の検査に関する変更

換気設備の検査に関する変更の一例を紹介します。

調査項目改正前改正後
1 法第28条第2項又は第3項の規定に基づき換気設備が設けられた居室(換気設備を設けるべき調理室等を除く。)(9)なし各居室の給気口及び排気口における物品の放置の状況

換気設備の「物品の放置状況の確認」は、今後建築設備定期検査でおこないます。

3.非常用照明装置の検査に関する変更

非常用照明装置の検査に関する変更は下記のとおりです。

調査項目改正前改正後
2 電池内蔵型の蓄電池、電源別置型の蓄電池及び自家用発電装置(1)予備電源作動の状況及び点灯時間を確認する。ただし、自動検査機能を有するものにあっては、自動検査機能による検査終了後における表示等により確認することで足りる。作動の状況及び点灯時間を確認する。
調査項目改正前改正後
2 電池内蔵型の蓄電池、電源別置型の蓄電池及び自家用発電装置(2)照度避難上必要となる部分のうち最も暗い部分の水平床面において低照度測定用照度計により測定する。ただし、自動検査機能を有し、非常時のみLED ランプが点灯するものにあっては、自動検査機能による検査終了後における表示等により確認することで足りる。避難上必要となる部分のうち最も暗い部分の水平床面において低照度測定用照度計により測定する。
調査項目改正前改正後
2 電池内蔵型の蓄電池、電源別置型の蓄電池及び自家用発電装置(3)照明の妨げとなる物品放置の状況なし

非常用の照明装置については、作動状況確認と物品の放置状況確認の重複を削除したことから、特定建築物調査では設置確認のみとなり、作動検査は建築設備定期検査でおこないます。

防火設備定期検査の主な4つの変更点

防火設備定期検査に関する変更点は下記の4点です。

1.調査方法の追加

2.防火扉の検査に関する変更

3.防火シャッターの検査に関する変更

4.耐火クロススクリーン、ドレンチャーの検査に関する変更

順にみていきます。

1.調査方法の追加

調査項目改正前改正後
(1)防火扉目視により確認する目視またはこれに類する方法

改正後の「目視またはこれに類する方法」においては、「特定建築物定期調査の調査方法の追加」で記載した内容と同様です。

2.防火扉の検査に関する変更

防火扉の検査に関する変更は下記のとおりです。

調査項目改正前改正後
(1)防火扉閉鎖の障害となる物品の放置の状況閉鎖又は作動の障害となる物品の放置並びに照明器具及び懸垂物等の状況
防火扉(4)常時閉鎖した状態にある防火扉(以下「常閉防火扉」という)なし固定の状況
防火扉(5)人の通行の用に供する部分に設ける防火扉(常閉防火扉にあっては、各階の主要なものに限る)閉鎖時間・閉鎖力の測定閉鎖時間・閉鎖力の測定※人が通る部分に限定される

常閉防火扉の検査においては、今後防火設備定期検査での確認となります。

3.防火シャッターの検査に関する変更

防火シャッターの検査に関する変更は下記のとおりです。

調査項目改正前改正後
防火シャッター(1)閉鎖の障害となる物品の放置の状況閉鎖又は作動の障害となる物品の放置並びに照明器具及び懸垂物等の状況
防火シャッター(10)~(14)危害防止装置(人の通行の用に供する部分に設ける防火シャッターに係るものに限る。)すべて対象、すべての危害防止装置の設置が求められる危害防止装置の検査は、人が通る部分に限定される

4.耐火クロススクリーン、ドレンチャーの検査に関する変更

耐火クロススクリーン、ドレンチャーの検査に関する変更は下記のとおりです。

調査項目改正前改正後
耐火クロススクリーン(1)閉鎖の障害となる物品の放置の状況閉鎖又は作動の障害となる物品の放置並びに照明器具及び懸垂物等の状況
ドレンチャー等(1)作動の障害となる物品の放置の状況作動の障害となる物品の放置並び に照明器具及び懸垂物等の状況

予定されている報告様式の変更について

予定されている定期報告(12条点検)の報告様式の変更は、下記のとおりです。

・特定建築物定期調査の調査結果図

調査・検査の業務の効率化を目的として、結果の表に添付する各階の平面図に「防火区画」を明示する予定です。

・防火設備定期検査の検査結果

対象の建築物全体に対する不具合の箇所の数値が分かる様式へ変更予定です。

・検査項目の変更にともなう報告様式の変更

今回の変更にともない、特定建築物定期調査・建築設備定期検査・防火設備定期検査それぞれの検査項目が、2025年7月1日からの各検査より変更され、それにともない報告書の様式もすべて変わります。

なお今回は、検査種目自体が改正される関係上、経過措置の予定はありません。

今回の定期報告法改正により考えられる影響

今回の改正により考えられる影響は、防火設備定期検査と建築設備定期検査に該当する設備が増える可能性があることです。

現在、特定建築物調査のみが対象となっている建物は、非常用照明・換気設備・排煙設備の作動検査が実施されなくなります。

その対応策として、防火設備定期検査、建築設備検査の対象となる設備や建物が増える可能性があります。

12条点検の定期報告に関するご相談はテックビルケアへお任せください!

12条点検は、もとより調査項目が多く、点検にあたっては専門的な知識が必要です。

また、今回の改正に際して複雑な部分もあり、スムーズに理解しづらい点もあるでしょう。

改正において今回の変更された内容を見過ごすことなく、建物管理をおこなうために正しく理解し、適切な対応が必要です。

テックビルケアでは、高い専門性を持った国家資格保有者が12条点検をサポートします。

定期報告の作成から行政庁への届出まで、一貫してお引き受け可能ですので安心してお任せください。

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