2018年4月に改定された宅建業法により、既存住宅購入時にホームインスペクションの説明が義務化されてから、ホームインスペクションが徐々に脚光を浴びてきました。現在では新築・中古問わずホームインスペクションのニーズが年々増えてきています。この記事では、
・ホームインスペクションの費用相場
・ホームインスペクションは誰が依頼し誰が支払うのか
・依頼する際の注意点や依頼先の探し方
について詳しく解説します。
この記事を読んで、ホームインスペクションを身近に理解し、住宅購入をする際の安心を手に入れましょう。
ホームインスペクションの費用相場
不動産流通経営協会が発表している不動産流通業に関する動向調査によると、中古住宅(既存住宅)の購入に際してなにかしらの建物調査を行った購入者は、既存住宅購入者全体の54.4%となっています。ちなみに、既存戸建て購入者の69.9%、既存マンション購入者の47.6%もなにかしらの建物調査を行っています。
参照:一般社団法人不動産流通経営協会「不動産流通業に関する消費者動向調査」
このように、ホームインスペクションは年々身近な制度になりつつあるので、ここでは費用の相場について説明します。
新築一戸建ての費用相場
新築住宅(建売や分譲マンション)のホームインスペクションは、基本調査で40,000〜70,000円が費用相場です。
主に施工不良や図面通りになっていない部分を調査するのが目的で、床下や小屋浦への侵入調査など、隅々まで細かな調査が必要な場合には30,000円程度の追加費用がかかります。
ただ、料金は業者によってさまざまなため、屋根裏や床下の調査やサーモグラフィーやドローンを使った調査自体を、基本料金に含めて80,000~90,000円で行っているところもあります。
また、新築マンションのホームインスペクション費用は、戸建て住宅より若干安く40,000〜60,000円が相場となっています。
中古住宅一戸建ての費用相場
一般的な30坪前後の木造戸建ての場合、基本調査で50,000〜70,000円が費用相場です。
オプションとして、床下・屋根裏の侵入調査や屋根の調査で、それぞれ20,000〜30,000円程度かかります。
基本的な料金体系は、新築の場合とあまり変わらないところも多いのですが、中古住宅の場合は築年数が経っている場合や、大規模な改築が行われた物件は、通常よりも高額になるケースがあります。
ただ、新築の場合と同じように屋根裏や床下の調査、サーモグラフィーやドローンを使った調査自体を基本料金に含めているところもあります。
テックビルケアでは、ホームインスペクションを受けることでより大きな安心が得られるよう、基本プランに最新技術を用いた調査を含めています。
中古マンションの費用相場
一般的な70平米前後の中古マンションの場合、基本調査費は40,000〜60,000円くらいが費用相場です。
オプションとして、コンクリート圧縮強度の調査費として10,000〜20,000円、設備・給排水管調査として5,000〜10,000円がかかります。
床面積も100平米未満のマンションが主流のため、一戸建てに比べて調査範囲が狭いため料金もやや低めです。
参考までに、代表的な分譲マンションの共有・専有部分には次のようなものがあります。
・窓・玄関ドア
・パイプスペース
・ベランダ・バルコニー
また、分譲マンションには床下や屋根裏がないケースがほとんどなので、調査の必要がない代わりに、コンクリート強度の測定や給排水管の劣化状況をオプションにしているところがあります。
ホームインスペクションの費用は誰が負担する?

ホームインスペクションの費用を誰が負担するという決まりはありません。
ホームインスペクションを、売主側が行う場合と買主側が行う場合の2通りがあり、売主が行う場合には売主が負担し、買主が行う場合には買主が負担することが一般的です。
売主が行うホームインスペクションの目的は、住宅自体を売却しやすくすることです。
買主が行う場合は、住宅の購入前に専門家に調査してもらうことによって安心と納得感を得ることを目的としています。
買い手側がインスペクションを行う場合
購入物件の検索 |
↓
媒介契約の締結 |
↓
買付証明書の提示 |
↓
ホームインスペクションに関する売主の承諾 |
↓
ホームインスペクションの実施 |
↓ ↓
売買契約の締結 | 購入見送り |
↓
引き渡し |
買主がホームインスペクションを行うタイミングは、売買契約書を結ぶ前に提示する買付証明書の提出後が一般的です。
買付証明書とは、売買価格や引き渡しの時期などを記載した書面です。買付証明書には法的効力はなく、提出義務自体もありません。しかし、不動産を購入する際に口頭だけでの約束ではなく、書面による正式な購入の意思表示として使われる大事なものです。
ホームインスペクションは、実際に家の中に入って調査をするため、買う意思があるかどうか曖昧な状態で行うわけにはいきません。
また、売主にとってはホームインスペクションは粗探しをされるような印象を持つため、許可しない場合があります。売主が承諾しない場合にはホームインスペクションはできないので注意しましょう。
逆に、きちんとした手続きを経てホームインスペクションを行った場合、結果次第で購入を見送るという選択肢もあることがポイントです。
売り手側がインスペクションを行う場合
価格査定 |
↓
媒介契約の締結 |
↓
ホームインスペクターへの作業依頼 |
↓
ホームインスペクションの実施 |
↓
売却活動を開始 |
↓
契約条件の交渉 |
↓
売買契約締結 |
↓
引き渡し |
売主がホームインスペクションを行う場合には、一般的には不動産会社に価格査定を依頼し、不動産会社と媒介契約を結んだあと、ホームインスペクターをあっせんしてもらうという流れです。また、売主自らがインターネット等でホームインスペクターを探す場合もあります。
ホームインスペクションは、合格すると瑕疵(かし)担保保険の付保要件となります。ただし、瑕疵担保保険の付保条件を満たすためには、検査を実施するインスペクターが「既存住宅状況調査技術者」かつ「住宅瑕疵担保責任保険法人の登録検査事業者」であることが必要です。
瑕疵担保保険とは、住宅の売買の際に瑕疵(欠陥)があった場合に、補修費などの費用を負担する保険です。せっかく行ったホームインスペクションが、瑕疵担保保険の付保要件を満たしていなかったということがないよう、不動産会社に適切なインスペクターを紹介してもらうことをおすすめします。
ホームインスペクターをあっせんしてもらったら、実際にホームインスペクションを行います。
ホームインスペクターからは、調査後に各調査箇所の所見を含めたレポートを作成してもらえます。
ホームインスペクション依頼から当日までの流れ
ここでは、ホームインスペクションを実際に依頼してから当日までの流れを説明します。
【ホームインスペクション依頼から当日までの流れ】
1.ホームインスペクション会社に依頼 2.調査の申し込み(日時の決定) 3.必要書類の準備および送付 4.ホームインスペクションの実施 5.調査報告書の受け取りと支払い |
1.ホームインスペクション会社に依頼
ホームインスペクションを依頼する会社を決めたら、電話やホームページの問い合わせフォームに、調査方法の確認や費用の見積もりなどを問い合わせましょう。
2.調査の申し込み(日時の決定)
調査日時が決まったら、実際に申し込みます。
3.必要書類の準備および送付
事前にホームインスペクション会社から依頼された資料を送付します。ホームインスペクション会社によっては、インスペクション当日に必要書類を確認するところもあります。
4.ホームインスペクションの実施
約束の日時に依頼主立会いのもと、インスペクターが住宅診断を行います。依頼主は、当日現地である程度の調査報告を聞くことが可能です。
5.調査報告書の受け取りと支払い
ホームインスペクションの報告書を受け取ります。調査当日に受け取ることもありますが、一般的には1週間以内に受け取ることが多いです。内容に疑問点や納得がいかないことがある場合、必ず確認をしましょう。
その後、ホームインスペクション会社の指定日に料金を支払って、ホームインスペクションは終了です。
ホームインスペクションにかかる時間および期間

ここでは、ホームインスペクションにかかる時間や期間を確認します。
ホームインスペクション会社や調査する内容、住宅の規模によってさまざまですが、ある程度の目安を知っておくことは大切です。
一般的に、ホームインスペクションを申請してから調査当日までは、1〜2週間程度ほどみておきましょう。ホームインスペクション会社にもよりますが、申し込んで翌日に調査することはまずありません。
希望日を聞かれたら、1週間くらいの余裕をもって申し込みましょう。
ホームインスペクション自体にかかる時間は、基本2〜3時間程度です。
ただし、調査する住宅の規模や調査内容によって変わってきます。
一戸建ての屋根裏や床下、屋根の状態など目視での判断が難しい詳細な検査を行う場合にはさらに時間がかかります。
また、調査報告書は会社や調査内容によって当日渡される場合もありますが、後日送付される場合が多く、1週間程度かかるケースもあります。詳しい日程については、依頼するインスペクターに確認しましょう。
ホームインスペクションを利用する際の注意点
ホームインスペクションを利用する際の注意点を確認しておきましょう。
・スケジュールに余裕を持つ
・すべての瑕疵を明らかにできるものではないと認識しておく
・第三者性を重視したホームインスペクション業者に依頼する
順に説明します。
スケジュールに余裕を持つ
ホームインスペクションを依頼する場合には、時間的な余裕を持つことが必要です。
先述したように、ホームインスペクション自体は2~3時間程度で終わるケースもありますが、依頼してから当日までと、さらに報告書が届くまでトータル2週間ほどかかる場合があります。
また、地方によってはインスペクターが不足しているところがあるため、依頼してから当日まで1週間以上かかる場合もあるでしょう。住宅売買のスケジュール自体に影響をおよぼすことがないよう、スケジュールには余裕を持つことが大切です。
すべての瑕疵を明らかにできるものではないと認識しておく
ホームインスペクションでも、すべての瑕疵が完璧に発見できるわけではないと認識することが重要です。
ホームインスペクションは、住宅の隅々までしらみつぶしに調査するわけではありません。目視できない箇所などは、依頼者の意向がない限り検査しない業者もあります。
また、売主側に関して、過去に自殺や殺人事件、火災や忌まわしい事故などがあり心理的な面において住み心地の良さを欠く不具合である「心理的瑕疵」はインスペクションの対象ではありません。
心理的瑕疵を含め、ホームインスペクションによって、すべての欠陥や不具合を完璧に発見できるわけではないという点は把握しておきましょう。
第三者性を重視したホームインスペクション業者に依頼する
買い手側としてホームインスペクションを行う場合には、不動産会社やリフォーム会社にホームインスペクションを依頼するのはやめましょう。利害関係から売り手側や不動産会社に有利な調査をしてしまいがちだからです。ホームインスペクションは中立な観点から実施することが求められます。利害関係がある立場から行ったインスペクションの結果は、著しく信憑性に欠けるケースがあるためあまり意味がありません。
ホームインスペクション会社の探し方

新築中古にかかわらず、利害関係のない中立的なホームインスペクションを行うことは非常に大切です。ここでは、具体的なインスペクション会社の探し方を3つの観点から解説します。
・実績はどうか?
新築・中古住宅、それぞれに構造や建物の状態や種類もさまざまです。
保有資格だけを判断材料とするのではなく、キャリアや実績を重視することも大切です。
これまで診断してきた建物の種類や件数を、聞ける範囲で聞いて確認しましょう。
・コミュニケーション能力や説明の分かりやすさには問題ないか?
ホームインスペクションとしての診断能力だけでなく、不動産仲介業者や売主側と良好なコミュニケーションを取れることも大切なポイントです。実際にホームインスペクションを行うこと自体に消極的な方たちに対して、誠実な対応をとることにより住宅の売買契約自体がスムーズに進むケースもあります。
また、買主は住宅関連の専門的な知識を持ちあわせていない場合が多いため、ホームインスペクションの結果などの報告をする場合に、分かりやすく説明する必要があります。
たとえば、問題点が発見された時に、どの程度の問題でいつまでにどう対処すればいいのかなどを、誰にでも分かるように説明してくれるかどうかも重要です。
これらも、問い合わせの際に確認しておきましょう。
・格安ホームインスペクションには要注意
極端に安すぎるホームインスペクションは要注意です。
スキルに自信がないか、リフォームの仕事をとるためにホームインスペクションを行っているという可能性もあります。
ホームインスペクションをプロのビジネスとして成立させられるだけの料金設定であることが、健全さを物語るひとつの指標です。
ホームインスペクションに関してお気軽にお問い合わせください

ホームインスペクションは家の健康診断です。新築も中古住宅も人と同じで、不具合が見つかれば早期に対応することでリスクを最小限に抑えられます。
インスペクションを受けることによって得られる安心感は、住宅購入後に始まる新しい生活にとって何ものにも代えがたい貴重な財産になります。
テックビルケアでは、住宅を売りたい方、住宅を買いたい方それぞれの悩みに適切に対応いたします。
ホームインスペクションをお考えの方は、ぜひお気軽に弊社までお問い合わせください。