建売住宅の購入を考えている方のなかには、「ホームインスペクションは必要なのか?」と悩む方も多いのではないでしょうか。
新築だからといって必ずしも完璧とは限らず、実際に施工ミスや見えない部分の不具合が見つかるケースもあります。
この記事では、下記の3点について解説しています。
・ホームインスペクションが建売住宅に必要な理由
・建売住宅でよく発覚する欠陥事例
・建売住宅購入の際にホームインスペクションをおこなうタイミング
後悔しない住宅購入のために、ぜひ参考にしてください。
建売住宅向けのホームインスペクションについて
建売住宅とは、売主である不動産会社が土地を購入し住宅を建て、土地と住宅をセットで販売するもので、分譲住宅とも呼ばれています。
新築であるこの建売住宅を購入する際に、ホームインスペクションが必要かどうかで悩む人は少なくありません。
実は、工事の簡素化や規格化が進む一方で、ベテランや若手職人の人手不足や現場監督の掛け持ちなどが原因で施工不良が見つかることも多く、ホームインスペクションの必要性が高まっています。
ホームインスペクションが建売住宅に必要な3つの理由
建売住宅は、完成済みまたは建築中の状態で販売されるため、購入者が建築過程を細かく確認するのは難しいのが現実です。
建売住宅にホームインスペクションをおすすめする主な理由は下記の3つです。
1.素人にはわからない施工ミスを把握できる
2.引渡し前に補修の要求が可能
3.安心が得られる
順に解説します。
1.素人にはわからない施工ミスを把握できる
建売住宅は、決められた工期内で効率的に建築されるため、施工の質がばらつくことがあります。
特に、目に見えない部分の施工ミスは、一般の購入者には判断が難しいものです。
ホームインスペクションでは、建築の専門家が住宅の構造や設備を細かくチェックし、素人では気づけないような問題点を明らかにします。
2.引渡し前に補修の要求が可能
ホームインスペクションの実施により、問題点を見つけることができれば、売主や施工会社に補修を依頼できる場合があります。
特に、契約前または引渡し前のタイミングでホームインスペクションをおこなえば、修理を要求しやすくなるのがメリットです。
たとえば、床の傾きや建具の立て付けのズレなど大がかりな工事が必要になる場合は、引渡し前であれば、施工会社の負担で修繕できる場合が多いです。
また、補修の必要がある部分を事前に把握しておけば、入居後のトラブルも未然に防ぐことができます。
3.安心が得られる
ホームインスペクションを実施することで、何より安心感が得られます。
住宅は人生でもっとも大きな買い物の1つであるため、問題がないか不安になる方もいるでしょう。
しかし、第三者の専門家が建物の状態を確認して問題がないと判断してくれれば、不安なく住み始めることができます。
もし不具合が見つかった場合でも、事前に対応策を講じることができるため、後悔のない住宅購入につながるでしょう。
不動産会社や施工会社がホームインスペクションは不要という5つの理由

ホームインスペクションは、住宅の品質をチェックするために有効な手段ですが、不動産会社や施工会社のなかには「必要ない」と主張するところもあります。
ここでは、不動産会社や施工会社がホームインスペクションは不要という理由を説明します。
1.施工ミスの発覚を恐れているから
2.瑕疵担保保険や建築確認検査があるから
3.契約前に他の不動産会社が販売するリスクがあるから
4.売買契約が成立しなくなることを恐れているから
5.対応が面倒くさいから
順に見ていきましょう。
1.施工ミスの発覚を恐れているから
施工会社や不動産会社のなかには、ホームインスペクションの実施によって施工ミスや欠陥が発覚することを恐れている場合もあります。
特に、建物の耐久性や快適性に大きく影響を与える大きな欠陥が検査で発覚すれば、売主側にとっては修繕コストや手間が増えてしまいます。
その結果、ホームインスペクション自体を避けたいという心理が働くのです。
2.瑕疵担保保険や建築確認検査があるから
不動産会社や施工会社は、「建売住宅は建築基準法に基づく建築確認検査を受けているし、瑕疵担保保険(住宅瑕疵担保責任保険)が適用されるから、検査の必要はない」と主張することがあります。
たしかに、建築確認検査は一定の品質基準を満たしているかをチェックする制度ですが、あくまで設計図どおりに建築されているかどうか確認するものです。
また、瑕疵担保保険が適用されるのは、構造耐力上主要な部分や雨水の浸入を防ぐ部分の瑕疵などに限られます。
これらの制度だけでは実際の施工精度や細かな不具合などのチェックはできないため、第三者によるチェックが有効です。
3.契約前に他の不動産会社が販売するリスクがあるから
建売住宅は、人気の物件はすぐに売れてしまうという、ある意味早い者勝ちの側面が強い商品です。
不動産会社は「ホームインスペクションをしている間に、他の不動産会社が先に販売してしまうリスク」があるため、検査に関して後ろ向きなことがあります。
特に、売主と直接やり取りする場合は、「早く契約しないと他の人に取られますよ」と急かされるケースもあります。
しかし、住宅の品質を確認せずに購入すると、後から修繕費用がかかるリスクもあるため注意が必要です。
4.売買契約が成立しなくなることを恐れているから
不動産会社や施工会社にとって最も避けたいのは、「契約の白紙撤回」です。
ホームインスペクションをおこなった結果、重大な欠陥が見つかると、購入者が不安を感じて契約を取りやめる可能性もあります。
そのため、「わざわざリスクを増やす必要はない」と考え、ホームインスペクションに消極的な場合があります。
5.対応が面倒くさいから
ホームインスペクションを実施すると、検査の立ち会いや結果に基づく修繕対応など、不動産会社や施工会社にとっての手間が増えます。
特に、複数の物件を販売している場合、1件ごとにホームインスペクション対応をするのは時間的にも負担が大きいため、「面倒くさい」と考える業者も少なくありません。
しかし、購入者にとっては、一世一代の大きな買い物です。
対応が面倒だからといって、購入後のリスクが払拭できないのは正当な契約とはいえません。
なぜ検査が不要なのか、正当な理由を聞いたうえで、購入者側としての検査に対する希望をはっきり主張しましょう。
建売住宅のホームインスペクションでよく発覚する5つの欠陥事例

ここでは、建売住宅でよく発覚する5つの欠陥事例を紹介します。
1.基礎コンクリートの欠陥
2.雨水侵入の欠陥
3.断熱材の欠陥
4.床下の欠陥
5.屋根裏や天井裏の欠陥
順に見ていきましょう。
1.基礎コンクリートの欠陥
住宅の基礎は建物全体を支える重要な部分ですが、ホームインスペクションでは、以下のような基礎の欠陥が発覚する場合があります。
・クラック(ひび割れ)
建売住宅で最も多い欠陥といわれており、小さなひびでも放置すると、水の侵入により鉄筋が錆びて構造強度が低下する可能性があります。
・斫り(はつり)
斫りとは、コンクリートの一部を壊すことをいいます。
設計図自体が不完全であったり、工事現場での段取りに問題があった場合に、コンクリートを打設したあとに斫らなければ給排水管などを設置できないことがあります。
斫りの痕跡が見つかった場合は、それが構造自体やコンクリートの劣化に影響がないかを判断する必要があるため注意しなければなりません。。
2.雨水侵入の欠陥
住宅の劣化を早める大きな要因となる、雨漏り浸水による欠陥も少なくありません。
雨水侵入の原因は、ベランダの防水やサッシなどの開口部の施工不良によるものが大半です。
しかしながら、最近の建売住宅の多くは内壁をビニールクロスで仕上げており水分を通さないため、雨水侵入の初期状態では、室内からの目視確認は容易ではありません。
目視で雨水侵入を確認できる状態になる頃には、構造体が腐食している可能性があるため、ホームインスペクションにより早期発見することがポイントです。
3.断熱材の欠陥
建売住宅では、断熱材の施工ミスが原因で、冬は寒く夏は暑い住宅になってしまうケースがあります。
具体的には、壁や天井に施工された断熱材が適切に固定されていないため、隙間ができてしまい断熱効果が大幅に低下するケースです。
一部の箇所で断熱材が適切に入っていない、または厚みが不十分など断熱材不足が原因で、本来の断熱効果が出ない場合もあります。
断熱性能の不備は、住宅の快適性だけでなく光熱費の増加に影響するため、ホームインスペクションでしっかりチェックすることが大切です。
4.床下の欠陥
床下は普段目にすることがないため、施工の品質がチェックされにくい部分ですが、ホームインスペクションにより、以下のような欠陥が発見されることがあります。
・湿気が多くカビが発生している:床下の換気が十分でないことが原因
・木材部分が適切に防蟻処理されていない:シロアリ被害のリスクが高まる
・床下配管の施工不良:給排水管の勾配が適切でない、または接続部分が甘く、水漏れが発生することがある
床下の問題は、放置すると構造全体に影響を及ぼす可能性があるため、購入前にしっかり点検することが重要です。
5.屋根裏や天井裏の欠陥
屋根裏や天井裏も通常は見えない部分ですが、ホームインスペクションで以下のような問題が見つかることがあります。
・屋根の防水施工不良:防水シートの施工に不具合があり、雨水が侵入している
・換気不良による結露の発生:屋根裏の換気が不十分で、木材の腐食やカビが発生している
・小動物の侵入跡:通気口や屋根の隙間からネズミや鳥が侵入し、巣を作っている
屋根裏や天井裏の問題は住み始めてから気づくことが多いため、事前にチェックしておくことが望ましいです。
建売住宅購入の際にホームインスペクションを実施するタイミング

ホームインスペクションを実施するタイミングによって、得られるメリットや対応できる範囲が異なります。
建売住宅購入の際にホームインスペクションを実施するタイミングは次の4つです。
・売買契約の前
・売買契約後・引渡し前
・引渡し後・入居前
・入居後
順に見ていきましょう。
売買契約の前
建売住宅の購入を検討している段階でホームインスペクションを実施すると、物件の状態を把握したうえで契約するかどうかを判断できます。
メリット | 注意点 |
・購入前に住宅の欠陥を把握し、問題がある場合は契約を見送ることができる・必要な修繕箇所を事前に確認し、補修対応を売主に求める交渉材料になる・住宅ローンの申請前にリスクを減らし、安心して購入を決定できる | ・売主側が「契約前のホームインスペクションを拒否する」場合がある |
可能であれば、売買契約前にホームインスペクションを実施し、購入後のリスクを最小限に抑えるのがおすすめです。
売買契約後・引渡し前
売買契約を締結したあとでも、引渡し前にホームインスペクションを実施すれば、物件に問題がないかを最終確認できます。
メリット | 注意点 |
・契約後でも不具合を発見すれば、引渡し前に売主に補修を求めることができる場合がある・住宅の最終状態をチェックし、住み始めてからのトラブルを防げる・追加費用をかけて修繕するリスクを低減できる | ・すでに契約済みのため、重大な欠陥が見つかっても契約の解除は難しい・売主が補修を拒否した場合、自分で修繕費を負担する可能性がある |
このタイミングでホームインスペクションをおこなう場合は、売主との交渉がポイントです。
契約時に「ホームインスペクションで発覚した不具合の補修を売主が対応する」といった条件を盛り込めれば理想的です。
引渡し後・入居前
住宅の引渡し後、入居する前にホームインスペクションを実施するケースもあります。
メリット | 注意点 |
・すでに引渡しが完了しているため、売主の都合を気にせず自由に調査できる・ホームインスペクションの結果をもとに、必要に応じて専門業者に修繕を依頼できる・住宅に問題があった場合でも、入居前なら大掛かりな補修がしやすい | ・引渡し後は売主の責任がなくなり、補修費用は基本的に買主負担になる・住宅ローンの支払いが始まるため、修繕費が追加で発生すると金銭的な負担が増える |
このタイミングでのホームインスペクションは「売主が対応しない場合の最終チェック」として有効ですが、可能であれば引渡し前に実施するほうが望ましいです。
入居後
入居後に住宅の不具合に気づき、ホームインスペクションを依頼するケースもあります。
メリット | 注意点 |
・実際に住んでみて気になる箇所を重点的に調査できる・住宅の性能や快適性に問題がある場合、原因を特定できる | ・すでに入居しているため、補修作業中は生活に支障が出る場合もある・買主の責任で修繕費用を負担する必要がある・売主や施工会社に瑕疵担保責任を問うには、証拠を揃えて早急に対応する必要がある |
入居後のホームインスペクションは「問題の原因を特定する」ためには有効ですが、購入前や引渡し前に実施するほうが、余計なトラブルを防ぐことができます。
建売住宅のホームインスペクションが必要かどうかを決めるのは売主ではなく買主

建売住宅の売主や施工会社のなかには、ホームインスペクションを「必要ない」と主張する場合も多いですが、最終的にホームインスペクションを実施するかどうかを決めるのは買主です。
住宅の購入は人生で最も大きな買い物の1つであり、住み始めてから「こんなはずではなかった」と後悔するのは避けたいものです。
最終的にその住宅に住むのは買主自身であり、将来の安心を確保するためにも、売主の意見に流されることなく、自分自身の判断でホームインスペクションを実施するかどうかを決めましょう。