非常照明検査の良否の判定基準
—告示・告示数値で読み解くチェックポイント
非常用照明装置は、停電や火災で常用電源が落ちたときに避難経路を照らす最後の頼みの綱です。建築基準法12条に基づく建築設備定期検査では、毎年1回この非常照明の良否を検査して特定行政庁へ報告しなければなりません。ところが現場で「これは要是正なのか、適合なのか」を即断するのは意外と難しく、告示の数値や検査方法を正しく押さえている必要があります。
この記事では、大阪建築防災センター発行の『建築設備検査者必携 2022年版』に示された検査要領をもとに、非常照明検査の良否判定基準を項目ごとに整理しました。実務でよく出る要是正例と、判定の根拠となる告示・政令もあわせて解説します(出典:大阪建築防災センター『建築設備検査者必携 2022年版』)。
1. 非常照明検査の全体像と判定の考え方 — 「適合/要是正」の二択
非常用照明装置は、建築基準法施行令126条の4・5、および昭和45年建設省告示第1830号で構造・性能が定められた建築設備です。建築設備定期検査では、これらの法令・告示に「適合しないこと」が確認された項目を「要是正」と判定し、報告書に記載します。
判定区分は3つ
『建築設備検査者必携』では、各検査項目の結果を以下のように区分しています。
- 指摘なし(適合):告示・政令の規定を満たしている状態
- 要是正:規定に適合しないため改修が必要な状態
- 既存不適格:建築当時の法令には適合していたが、その後の法改正で現行基準に合わなくなった状態
判断のよりどころは「告示1830号」
非常照明の検査項目はほぼすべて、昭和45年建設省告示第1830号の各号に紐づいています。器具・電源・照度・配線のいずれを判定する場合も、最終的には「告示の規定に適合しないこと」が要是正の判断基準となります。
2. 照明器具の判定基準 — ランプの種類と取付けの2項目
(1) 使用電球・ランプ等
検査方法は目視。判定基準は「告示1830号第1第一号の規定に適合しないこと」とされ、具体的な要是正例は次のとおりです。
- 電球が割れている
- 蛍光灯がちらついている
- 告示で定められた耐熱性・即時点灯性のあるランプ(白熱灯・蛍光灯・所定のLEDランプ)以外に交換されている
ランプ交換の際に、見た目だけで一般用ランプに替えてしまうケースが意外と多いポイントです。LEDランプの場合は、告示で限定列挙された規格(JIS C8159-1のGX16t-5口金付直管LEDランプ等)に該当するものでなければ要是正となります。
(2) 照明器具の取付けの状況
検査方法は目視・触診。判定基準は「天井その他の取付け部に正しく固定されていないこと」、または予備電源内蔵コンセント型器具では「差込みプラグが壁等に固定されたコンセントに直接接続されていない/コンセントから容易に抜ける状態であること」です。
古い器具で多いのは、内蔵電池式器具のプラグがゆるんで脱落寸前になっているケース。停電時に器具が点灯しない原因の代表例です。
3. 予備電源・切替回路の判定基準 — 30分・瞬時切替が判定の要
(1) 予備電源への切替えと点灯時間
検査方法は作動状況および点灯時間の確認。判定基準は「告示1830号第3第二号又は第三号の規定に適合しないこと」です。要是正例には次のものが挙げられています。
- 予備電源に切り替えても点灯しない
- バッテリー劣化により30分点灯しない
- 入室不可で点灯状況を確認できない(確認不可も要是正扱い)
解説では「停電直後に瞬時に点灯するか」「全数が30分以上点灯するか」が確認ポイントとされています。蓄電池の経年劣化で30分継続できないケースが、検査での要是正としては最も多い項目の一つです。
予備電源が自家用発電装置だけの建物
予備電源が自家用発電装置単独の場合、現行告示では蓄電池との組み合わせが必要なため要是正に該当します。ただし平成12年5月より前の確認済建築物は既存不適格として整理されます(出典:『建築設備検査者必携』第3章 非常用の照明装置 解説)。
(2) 切替回路の切替えの状況
常用電源を遮断して、自動的に瞬時に予備電源へ切り替わるかを確認します。要是正例は「常用電源を遮断しても予備電源に切替わらない」。蓄電池+自家用発電装置を併用する建物では、常用電源遮断直後から自家用発電装置の電源確立まで、点灯にタイムラグが発生しないことが判定基準です。
4. 照度の判定基準 — 1ルクス/2ルクスを低照度照度計で測る
非常照明検査の数値判定で最重要なのが照度です。避難上必要となる部分のうち最も暗い部分の水平床面において、低照度測定用照度計で測定し、告示1830号第4の規定値を下回ると要是正となります。
| 光源の種類 | 一般の場所 | 地下街 |
|---|---|---|
| 白熱灯 | 1ルクス以上 | 10ルクス以上 |
| 蛍光灯・LEDランプ | 2ルクス以上 | 20ルクス以上 |
測定方法のポイント
測定時刻は外光の影響を受けない夜間に行うのが原則です。ただし、外光がある程度遮断できる居室等(おおむね100lx以下)では、以下の手順で日中測定も認められています(出典:『建築設備検査者必携』参考 環境を考慮した照度測定)。
一般照明を消灯し、ブラインド等で外光を遮る
外光の影響を可能な限り排除した状態をつくる。
非常照明を点灯して照度を測定(A)
避難経路上の最も暗い水平床面で測る。
非常照明を消灯して同一地点を再測定(B)
外光等による「もとの明るさ」を計測。
差(A−B)が B の10%以上なら、その差を測定値とする
10%未満の場合は夜間に再測定が必要。ただし照度差が10ルクス以上ある場合は採用可。
測定位置の選定
測定位置は光源から最も遠く、避難上重要な点を選ぶのがセオリーです。具体的には、避難口となる出入口、照明器具の中心線と壁面の交点、廊下の幅の狭い部分の中心線と壁面の交点などが推奨されます。一方、居室の隅角部(1m×1m以下)や柱の影響で避難に支障のない部分は規定照度以下でも構いません。誘導灯がある場合は、誘導灯の影響を受けないよう覆いをして測定します。
5. 分電盤・配線の判定基準 — 表示と耐熱処理を細かく見る
(1) 非常用電源分岐回路の表示
分電盤を目視し、「非常用の照明装置である旨」の表示がないと要是正になります。停電検出回路(不足電圧継電器)のある常用分電盤および非常用照明分電盤が対象です。予備電源が別置型蓄電池の場合は分岐回路に表示が必須。内蔵型蓄電池の場合は平成28年12月16日以降、表示は法令上不要となりましたが、実務上は表示しておくことが推奨されます。
(2) 配電管等の防火区画貫通措置
配電管が準耐火構造の防火区画を貫通する箇所を目視・触診し、必要に応じて鋼製巻尺で測定します。要是正例は「耐熱配線で防火区画を貫通しているが耐火パテがやせている」。判定基準は施行令112条20項・129条の2の4第1項第七号に適合しないこと。貫通部から両側1m以内が不燃材料か、配電管外径が90mm超なら適切な貫通措置がされているかを確認します。
(3) 配線・接続部・予備電源〜器具間の耐熱処理
口出線と電気配線が直接接続されているか、途中にコンセントやスイッチが入っていないか、接続箇所の耐熱処理が十分か、予備電源から非常用照明器具までの配線に告示で求められる耐熱性能(600V二種ビニル絶縁電線等)があるかを目視確認します。配線途中にプルスイッチがかんでいる、器具の耐熱コネクターが損傷している、などが代表的な要是正例です。
(4) 充電ランプの点灯(電池内蔵型)
一般照明用の点滅スイッチをOFFにしても、内蔵電池式器具の充電ランプ(モニターランプ)が緑色に点灯し続けるかを目視確認します。誤配線で内蔵電池が充電されていないケースもあるため、点滅スイッチ連動の有無も合わせて確認します。
6. 要是正にしないための日常管理ポイント
判定基準を逆から読むと、要是正を出さないためにオーナー・管理者が日常レベルで気をつけるべきポイントが見えてきます。
ランプ交換は告示適合品で
非常用照明器具の交換ランプは、告示1830号第1第一号で限定された製品から選ぶ。
蓄電池の更新サイクル管理
内蔵電池はおおむね4〜6年で性能が落ちる。30分点灯を満たせなくなる前に交換計画を立てる。
充電モニターランプの巡回確認
緑色LEDが消えている器具は内蔵電池の充電不良。日常巡回でリストアップ。
分電盤の表示シールを欠落させない
盤面塗装や改修工事のたびに「非常用の照明装置」表示が剥がれることがある。再貼付の徹底を。
非常照明の判定基準は数値・告示が細かく、現場で迷いやすい項目が多いのが実情です。日々の管理を仕組み化し、検査本番で慌てないようにしておくことが、要是正ゼロへの近道です。
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