随時閉鎖式と常時閉鎖式の防火設備の違いとは?
仕組み・対象建物・検査ポイントを解説
ビルやマンションの図面・点検報告書を見ていると、「常時閉鎖式」「随時閉鎖式」という言葉が並んで出てきます。どちらも火災時に区画を遮って延焼を食い止める防火設備ですが、普段の状態と閉まる仕組みがまったく違うため、検査の内容も日常の管理ポイントも分かれてきます。
この記事では、両者の違いを建築基準法上の位置づけから整理し、代表的な設置例、定期検査で必ず見られる項目までを実務目線でまとめます。テックビルケアは40年以上にわたり消防設備点検と建築基準法第12条点検を行ってきました。現場で「ここを見落とすと指摘される」というポイントも交えてお伝えします。
1. 防火設備とは — 区画を守る建物の「自動シャットダウン装置」
防火設備は、火災時に開口部を遮って炎や煙の広がりを抑える役割を担います。建築基準法では、防火戸・防火シャッター・耐火クロススクリーン・ドレンチャーなどが該当します。建物を防火区画ごとに切り離し、人が逃げる時間と消防が活動する時間を稼ぐのが本来の目的です。
開口部にどんな防火設備を入れるかは、建物の用途・規模・区画の種類(面積区画・竪穴区画・異種用途区画など)によって決まります。そのうえで「普段は閉めておくか/普段は開けておいて火災時に閉めるか」の運用方式の違いが、常時閉鎖式と随時閉鎖式の分かれ目になります。
2. 常時閉鎖式 — 普段から閉めておくタイプ
常時閉鎖式は、その名のとおり普段から扉が閉まっている状態を基本とし、人や物が通るときだけ手で開け、手を離せば自重やクローザーの力で自動的に閉まる構造です。
よく使われる場所
- 共同住宅・ホテルの各住戸玄関扉(隣戸との区画)
- 事務所ビルの避難階段に出る扉(竪穴区画)
- 物販店舗のバックヤード扉
- 階段室・エレベーターホールの区画扉
避難経路の入口やマンションの玄関扉など、比較的小さな開口部で使われるのが典型です。住戸の玄関扉に「閉めてください」のステッカーが貼られているのは、この常時閉鎖式の意味を保つためです。
仕組みのポイント
扉の上部に「ドアクローザー」と呼ばれる油圧式の自閉装置が付いており、開けた扉が自動的に閉まります。床にストッパー金具がある場合もありますが、防火区画上の扉でストッパーを使って開け放しにすることは原則NGです。火災時に閉まらなければ、そもそも区画が成立しません。
3. 随時閉鎖式 — 普段は開け、火災を感知して閉めるタイプ
随時閉鎖式は、普段は開放されていて通行や荷さばきに使われ、火災が起きたタイミングで自動的に閉まる設備です。連動制御器が煙感知器や熱感知器からの信号を受けてモーターやヒューズ装置を作動させ、扉やシャッターが降りる仕組みになっています。
よく使われる場所
- オフィスビルや商業施設のエレベーターホール前の防火シャッター
- 駐車場と建物本体の境界に設置される防火シャッター
- 物流倉庫の大開口部にある防火戸
- 吹き抜けや階段室の大型開口部
人や車両の動線が広く、常時閉鎖では業務が回らない開口部に設置されるのが典型です。倉庫や駐車場で天井近くに収納された状態の大型シャッターを見たことがあれば、それが随時閉鎖式の防火シャッターです。
仕組みのポイント
構成要素は大きく3つに分かれます。
感知器
煙感知器(光電式)や熱感知器(定温式・差動式)が天井に設置され、火災を検知する。
連動制御器
感知器の信号を受け、自動閉鎖装置に作動指令を送る制御盤。予備電源を持つ。
自動閉鎖装置
シャッターの巻取り部や扉のレリーズを物理的に解放し、扉・シャッターを降ろす。
危害防止装置(シャッター)
降下中に人や物を挟まないための座板感知装置。降下を一旦停止させる。
防火シャッターの危害防止装置は、2005年の建築基準法施行令改正で設置が義務付けられた安全機構です。古い建物では未設置のケースもあり、改修対象になりやすい部分です。
4. 一覧で見る違い — 比較表
両者の違いを表で整理すると、設計から日常管理まで何が違うのかが見えやすくなります。
| 項目 | 常時閉鎖式 | 随時閉鎖式 |
|---|---|---|
| 普段の状態 | 閉まっている | 開いている |
| 閉まる仕組み | ドアクローザー等の自閉力 | 感知器・連動制御器・自動閉鎖装置の連動 |
| 主な対象 | 住戸玄関扉、階段室扉、小区画の扉 | 防火シャッター、大開口部の防火戸 |
| 必要な装置 | 自閉装置(クローザー) | 感知器、連動制御器、自動閉鎖装置、危害防止装置(シャッター) |
| 日常管理の要点 | 開け放しにしない、ストッパー禁止 | 開口部・感知器周辺に物を置かない |
| 検査の重点 | 完全閉鎖・隙間・自閉動作 | 感知器連動・降下時間・危害防止装置 |
「常時閉鎖式の方が古いタイプ」は誤り
両者は建物の用途や開口部の大きさで使い分けるもので、新旧の関係ではありません。最新のビルでも、住戸扉や階段室扉は常時閉鎖式が基本です。
5. 定期検査でのチェックポイント — 見るところが違う
建築基準法第12条第3項に基づき、特定行政庁が指定する建築物の防火設備は原則1年に1回の定期検査が義務付けられています。検査は「防火設備検査員」または一級・二級建築士などの資格者が実施し、結果を特定行政庁へ報告します。2016年6月の改正で、防火設備の検査は建築設備とは別の検査区分として独立した経緯があります。
常時閉鎖式で見られる項目
- 扉が完全に閉まり、戸先・戸尻にすき間が出ていないか
- ドアクローザーの作動状態(途中で止まらないか、閉鎖速度は適正か)
- ストッパーやくさび、紐などで開け放しになっていないか
- 扉本体や枠の変形・損傷の有無
- 防火戸用蝶番(ヒンジ)の摩耗
随時閉鎖式で見られる項目
- 感知器が信号を出して連動制御器が作動するか(煙感知器または熱感知器の作動試験)
- 連動制御器の予備電源(バッテリー)の状態
- 自動閉鎖装置によりシャッター・防火戸が正常に降下・閉鎖するか
- 防火シャッターの降下時間と速度(速すぎ・遅すぎがないか)
- 危害防止装置(座板感知)が障害物を検知して停止するか
- 復旧操作で正常に元の位置へ戻るか
「設備は正常、運用で機能を失っている」状態に注意
随時閉鎖式の周辺に荷物・パレット・カートが置かれて降下経路を塞いでいるケース、常時閉鎖式の扉がマグネット・くさび・紐で開けっ放しになっているケースは現場で非常に多い指摘事項です。
日常の巡回チェックリストに「防火扉まわりに物がないか」「扉が手を離せば閉まるか」を1行入れておくだけで、定期検査での指摘数が大きく減ります。
6. テックビルケアでできること — 12条点検と消防設備点検をワンストップで
防火設備の検査は、建築基準法第12条点検(防火設備定期検査)として実施します。同じ建物には消防法に基づく消防設備点検(自動火災報知設備や消火器・スプリンクラー等)も入っており、報告先や周期が異なるため、別々の業者に依頼すると現場日程の調整だけでも手間がかかります。
消防・建築の点検をまとめて1社で完結
消防設備点検・特定建築物定期調査・建築設備定期検査・防火設備定期検査・非常用発電機の負荷試験までワンストップで対応。感知器の連動試験で必要となる火災受信機側との同時操作も自社内で完結できます。
大阪本社(摂津市)と東京支社(品川区)の2拠点体制で、関西・関東を中心に全国対応しています。
「随時閉鎖式の感知器連動だけ別業者で困っている」「シャッターの危害防止装置が動かないと言われたが直し方が分からない」といった個別のご相談から、定期検査の年間スケジュール化までお引き受けします。
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