定期報告制度とは?改正の背景を知る
定期報告制度とは、建築基準法第12条に基づき、多数の人が利用する特定建築物に対して、安全性を確保するための定期的な調査と報告を義務付ける制度です。
建物は年月の経過とともに劣化や損傷が生じ、安全性が低下することがあります。
そのため、定期的に建築士などの有資格者が状態を確認し、適切な維持管理を行うことが法律で求められています。
本制度は、建物の所有者、管理者、または占有者にとって義務であり、調査結果は管轄する特定行政庁に報告する必要があります。
これにより、建築災害や事故を未然に防ぎ、公共の安全を守ることが制度の主旨です。
定期報告(特定建築物定期調査・建築設備定期検査・防火設備検査)特設ページはコチラ
大阪市のビル火災が契機に
今回の制度改正の背景には、大阪市北区で発生したビル火災があります。
わずか一室での火元が数分で26名の命を奪うという、戦後最悪級の都市型ビル火災となりました。
火災後、同様の建物に対して調査を行ったところ、多数の違反や管理不備が発見されました。
これを受けて、国土交通省は「建築物の維持管理体制の見直しと強化」を目的とした法改正を進める方針を打ち出しました。
なぜ今、制度改正が必要なのか
従来の定期報告制度は、階数が5以上かつ延べ床面積が3,000㎡以上の大型施設が対象で、小規模事務所などは制度の対象外でした。
しかし、都市部では面積の小さい建物でも多くの人が利用するケースが増加しており、防火・避難対策の徹底が求められている状況です。
そのため、対象建築物の範囲を拡大することが、今回の法改正の大きな目的です。
法令違反の是正と予防が主目的
改正のもう一つの狙いは、建築基準法違反の是正指導を強化することです。
違法建築物や適切に管理されていない建物が見過ごされるリスクを軽減し、建築物の健全な運用を支える制度へと生まれ変わります。
定期報告制度は、単なる形式的なチェックではなく、建築物の「安全と安心」を守るための重要な手段なのです。
2025年の制度改正で何が変わるのか

2025年4月1日から施行される改正によって、定期報告制度の対象となる建築物の範囲が大幅に拡大されます。
特に注目すべきは、小規模な事務所やこれに類する施設が新たに報告義務の対象となった点です。
ここでは改正内容の詳細を、旧制度との比較を交えながら解説します。
改正前の対象条件(〜令和7年3月31日)
- 階数が5以上
- 用途に供する部分の床面積が3,000㎡以上
- 階数には地階を含まない
改正後の対象条件(令和7年4月1日〜)
- 階数が3以上
- 床面積が200㎡を超えるもの
- 地階および3階以上の階における床面積の合計がそれぞれ100㎡を超えるもの
- 小規模民間事務所については、検査項目が軽減される
これにより、今まで制度の対象外であった比較的小規模な事務所ビルも報告義務を負うことになります。
実質的には、階数や床面積に関係なく、3階建て以上の多くの事務所が対象になると理解するべきです。
対象となる市町村
対象規模を拡大する特定行政庁は 大阪市、堺市、岸和田市、和泉市、羽曳野市、大阪府(※)です。
※(大阪府が所管する市町村は 能勢町、豊能町、島本町、摂津市、交野市、四條畷市、大東市、
柏原市、松原市、藤井寺市、富田林市、太子町、河南町、千早赤阪村、河内長野市、大阪狭山市、
高石市、泉大津市、忠岡町、貝塚市、熊取町、泉佐野市、田尻町、泉南市、阪南市、岬町 です。)
引用:この情報は、大阪府建築士会が公表している資料をもとにしています。
新たに対象となる「小規模民間事務所等」とは?
新たに制度対象となる「小規模民間事務所等」とは、地階および3階以上にそれぞれ100㎡を超える用途部分があり、全体で200㎡を超える建物を指します。
この区分では調査項目が軽減されるものの、報告義務そのものは課されるため、必ず確認と対応が必要です。
自社ビルは対象?判定のポイント
自社の建物が定期報告の対象かどうかを判断するには、階数・用途・床面積という3つの視点が重要です。
制度改正により対象範囲が広がったことで、これまで報告義務がなかった事務所ビルなども対象となる可能性があります。
以下に、判断のための基準を詳しくご紹介します。
対象建築物の基本条件
次の3つの条件をすべて満たす建物は、定期報告制度の対象建築物とされます。
- 階数が3以上(地階を含まない)
- 事務所等の用途に供する部分の床面積の合計が200㎡を超える
- 地階または3階以上の階のいずれかに、事務所用途で100㎡を超える床面積が存在する
非対象となるケース
逆に、以下のようなケースは報告対象外となります。
- 階数が2以下
- 全体の床面積が200㎡未満
- 地階・3階以上いずれも100㎡以下である場合
判断事例:対象 or 非対象?
階数 | 床面積 | 地階・3階以上の面積 | 対象区分 |
---|---|---|---|
5階 | 1,200㎡ | 200㎡(地階)、400㎡(3階) | 対象(事務所) |
3階 | 250㎡ | 50㎡(地階)、110㎡(3階) | 対象(小規模事務所) |
2階 | 300㎡ | 80㎡(地階) | 対象外 |
3階 | 210㎡ | 80㎡(地階)、80㎡(3階) | 対象外 |
用途変更があった場合も要注意です。
報告対象外だった建物が、事務所や集会所などに用途変更された時点で、新たに定期報告が必要になります。
このような変更は「変更された直後の時期」に報告を行う必要があるため、用途変更の届出と併せて報告要否の確認を怠らないようにしましょう。
定期報告の内容とスケジュール

定期報告制度では、建築物の種類や規模に応じて、建築物・建築設備・防火設備の3つの項目について調査と報告が求められます。
報告の頻度や対象範囲には違いがあるため、各要件に応じた対応が必要です。以下にそれぞれの内容とスケジュールを詳しく説明します。
報告の種類と頻度
報告内容 | 対象建物 | 報告頻度 |
---|---|---|
特定建築物の調査 | 事務所その他、これに類する用途で階数が3以上・200㎡超 | 3年に1回 |
建築設備の検査 | 同上(ただし、小規模事務所等は対象外) | 毎年1回 |
防火設備の検査 | 同上 | 毎年1回 |
特定建築物・建築設備・防火設備とは?

報告対象となる「特定建築物」には、以下のような調査内容が含まれます。
- 敷地及び地盤の調査
- 屋上及び屋根の調査
- 避難施設等の調査
- 建物の外部の調査
- 建物の内部の調査など
「建築設備」には、以下のような設備が含まれます。
- 機械換気設備
- 非常用の照明装置
- 排煙設備
- 給排水衛生設備 など
「防火設備」とは、火災発生時に煙や炎の拡散を防ぐための設備で、次のようなものがあります。
- 防火扉
- 防火シャッター
- 耐火クロススクリーン
- ドレンチャー
これらは建物の安全性能を直接左右する重要な設備であり、定期的な機能確認と報告が義務付けられています。
新たに報告義務が発生する建物所有者の対応方法

建築基準法施行規則の改正により、小規模建物にも定期報告義務が課されるようになった今、建物の所有者や管理者は、迅速かつ確実な対応が求められます。
報告年度には、原則、特定行政庁より通知がきます。特にこれまで報告対象外だった施設を保有している場合、対応が遅れることで行政指導や罰則のリスクが生じる可能性があります。
まず確認すべきポイント
対応にあたっては、まず以下のポイントを確認しましょう。
- 自社所有の建物が定期報告対象に該当するか※
- 用途・構造・面積における法令上の位置づけ
- 過去に定期報告を実施した履歴の有無
- 点検・調査を実施する技術者の確保
※報告年度には、原則、特定行政庁より通知が来ます。
これらの情報は、各自治体の建築行政担当窓口、または建築士・建築設備点検会社から得ることができます。
対応の流れとスケジュール
定期報告の対応フローは以下の通りです。
ステップ | 内容 | ポイント |
---|---|---|
1 | 対象確認 | 建物用途・構造・面積の確認、自治体へ確認 |
2 | 点検業者への依頼 | 登録資格を持つ技術者・点検会社を選定 |
3 | 点検の実施 | 建築物・設備の安全性、劣化状況をチェック |
4 | 報告書の作成・提出 | 所定の様式に従って自治体へ報告 |
5 | 改善対応(必要な場合) | 指摘事項があれば修繕・改善対応を実施 |
スケジュール管理も重要です。
報告期限を過ぎてしまうと行政指導の対象となるため、報告時期を逆算した点検・報告書提出のスケジューリングを徹底しましょう。
弊社も例年、定期報告の提出期限が近づく時期には、多くのお客様より点検・報告に関するお問い合わせやご依頼をいただいております。
その中には、期限間際になってからのご相談も多く、ご希望の日程での対応が難しくなるケースや、報告書の作成・提出にお時間を要する事態も発生しております。
スムーズな点検と確実な報告書提出のためにも、可能な限りお早めにご相談いただくことをおすすめしております。
また、定期報告の内容は自治体によって若干の違いがあるため、所在地の自治体のガイドラインに従って対応することが重要です。
テックビルケアが提供する定期報告支援サービス
株式会社テックビルケアは、2025年の建築基準法改正に伴う定期報告業務において、建物所有者・管理者の不安や手間を大幅に軽減する包括的な支援サービスを提供しています。
特に、今回新たに報告対象となった小規模建物に対しても、法令に基づく適切な点検・書類作成・報告までをワンストップで対応します。
テックビルケアの強み
テックビルケアの定期報告支援サービスは、以下の点で高く評価されています。
- 一級建築士・専門技術者による正確な点検
- 建物の構造・用途に応じた最適な報告内容の提案
- 写真資料・図面作成・報告書の提出までフルサポート
- 最新の法令に完全対応した内部体制とノウハウ
サービス内容と依頼の流れ
定期報告支援サービスの一般的な流れは以下の通りです。
ステップ | 内容 |
---|---|
① 無料相談・ヒアリング | 建物の用途や面積、所在地に応じて対象判定 |
② 点検計画の立案 | スケジュールと点検内容を建物に合わせて調整 |
③ 点検の実施 | 現地調査・写真撮影・安全性の確認 |
④ 報告書の作成・提出 | 所定の様式に従い、自治体へ提出 |
⑤ 必要に応じた改善提案 | 劣化箇所がある場合、補修計画の提案も可能 |
建物の状態や使用状況は一つとして同じものはありません。
だからこそ、テックビルケアはお客様ごとに最適化されたオーダーメイドの対応を行い、確実な報告と建物の安全性維持を両立します。
定期報告に関するご相談・お見積りは、下記フォームよりお気軽にお問い合わせください。
▶ 株式会社テックビルケア お問い合わせフォーム
よくある質問(FAQ)

Q1. 改正前と何が変わったのですか?
従来は延べ面積や用途が一定基準を超える建物のみが定期報告の対象でしたが、2025年の法改正により、小規模な建物でも用途や構造により報告義務が発生するようになりました。
Q2. 自分の建物が対象かどうか、どう判断すればよいですか?
用途・構造・面積・利用形態により判断しますが、不明な場合は自治体の建築指導課または専門業者に確認するのが確実です。テックビルケアでも無料判定を行っております。※報告年度には、原則、特定行政庁より通知が来ます。
Q3. 定期報告を怠った場合、罰則はありますか?
はい。報告義務を怠った場合、行政指導や命令、最悪の場合過料(罰金)の対象となります。適切な時期に点検・報告を行うことが重要です。
Q4. 報告にかかる費用はどれくらいですか?
建物の種類、規模、点検項目によって異なります。目安としては10万円~30万円程度ですが、正確なお見積りは個別に対応いたします。
Q5. 今まで建築設備定期検査・防火設備検査をした事がなく、点検前に事前に準備するものはありますか?
建築計画概要書・竣工図面を確認させていただきます。
Q6. 受付済報告書はどのくらいで手元に届きますか?
繁忙期、閑散期によって多少前後はしますが、平均して2~3カ月程かかります。
まとめ
2025年の建築基準法改正により、小規模建物の定期報告義務が拡大され、これまで報告が不要だった建物でも点検・報告の必要が生じています。
本記事で紹介したように、用途・構造・利用形態に基づいた対象判断と、報告に必要な書類・点検作業の流れを理解することが、リスク回避と建物の安全確保に直結します。
不明点がある場合は、専門業者によるサポートの活用をぜひご検討ください。
株式会社テックビルケアへご相談ください

テックビルケアでは、定期報告の対象判定から点検、報告書作成、提出代行までワンストップで支援いたします。
法改正による不安や業務負担を軽減し、確実な法令対応を実現します。
建物の種類や地域に応じた最適な対応をご提案しますので、まずはお気軽にご相談ください。