消防設備点検と防火対象物点検の違いとは?対象や内容・罰則を徹底比較

火災による被害を最小限に抑え、安心できる建物環境を維持するためには「消防設備点検」と「防火対象物点検」の2つが欠かせません。

それぞれに点検の役割や対象、実施方法が異なりますが、よく違いが分からない方も多いと思います。

この記事では、「消防設備点検」と「防火対象物点検」2つの違いとそれぞれの対象や内容、罰則などの概要を詳しく解説します。

建物の管理者として、消防・防火に関する必要な知識を身につけたい方はぜひ最後までご覧ください。

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消防設備点検と防火対象物点検の違いを比較

消防設備点検と防火対象物点検の違いを一言でいうと、消防設備点検がハード面の点検であるのに対し、防火対象物点検はソフト面での点検である点です。

消防設備点検は、火災時に消火器やスプリンクラー、火災報知器などの消防用設備が、正常に作動するかを確認します。

一方、防火対象物点検は、防火管理上必要なことが実施されているか、基準を満たしているかを確認する点検です。

具体的には、防火管理者が選任されているか、避難や消火のための訓練をおこなっているか、避難経路に避難の妨げになる物を置いていないかなどを確認します。

万が一の火災発生時に効力を発揮する消防設備と、避難や消火活動などの人々がとる行動、その両輪が適正に機能することによって被害を最小限にとどめ、火災から身を守ることにつながります。

消防設備点検防火対象物点検
対象となる建物防火対象物特定用途の防火対象物
点検内容消防用設備等ハード面の点検防火管理体制などソフト面の点検
点検回数年2回機器点検:6カ月に1回総合点検:1年に1回年1回
必要な資格消防設備士消防設備点検資格者など防火対象物点検資格者
報告の回数特定防火対象物:年1回非特定防火対象物:3年に1回年1回
罰則1年以下の懲役または100万円以下の罰金30万円以下の罰金または拘留1年以下の懲役または100万円以下の罰金6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金30万円以下の罰金または拘留
法的根拠消防法第17条の3の3消防法第8条の2の2

消防設備点検と防火対象物点検をそれぞれ詳しくみていきましょう。

消防設備点検の概要

防火対象物の関係者は、消防設備等または特殊消防設備等を定期点検し、その結果を消防長または消防署長に報告しなければなりません。

参照:総務省消防庁「消防設備点検報告制度とは

具体的な点検の概要は下記のとおりです。

・消防設備点検の点検内容

・消防設備点検の対象となる建物

・消防設備点検実施者

・消防設備点検・報告の回数と罰則

順に解説します。

消防設備点検の点検内容

消防設備点検は、消火器や煙感知器、火災報知器、火災受信機、屋内消火栓、避難設備、誘導灯などの一般的な消防設備が点検の対象です。

また、点検の種類には、総合点検と機器点検の2種類があります。

総合点検機器点検
消防設備の全部もしくは一部を実際に稼働させ、使用することにより、総合的な機能を点検する。消火器をはじめとする消防設備が、適切に設置されているか、損傷はないかなどを主に外観からの目視または簡易的な操作により点検する。

消防設備点検の対象となる建物

消防設備点検の対象となる建物は、一戸建ての個人住宅を除く、ほぼすべての建物が当てはまる「防火対象物」が対象です。

防火対象物とは:消防法で定められた建築物、山林、船、車両などを指します。

参照:総務省消防庁[防火対象物] 参考1-1

消防設備点検実施者

下記の条件に当てはまる防火対象物に関しては、消防設備士または消防設備点検資格者による消防設備点検が義務づけられています。

【有資格者による消防設備点検が義務づけられている防火対象物】

1.延べ面積が1,000平方メートル以上の特定防火対象物※12.延べ面積が1,000平方メートル以上の非特定防火対象物※2で、消防長または消防署長が指定するもの3.特定一階段等防火対象物※34.全域放出方式の二酸化炭素消火設備が設置されている防火対象物

※1

特定防火対象物:不特定多数の人が出入りする建物、または災害時などに避難が困難と予想される施設のことです。

具体的には、ホテルや百貨店、地下街、病院、老人ホームなどの社会福祉施設などが含まれます。

※2

非特定防火対象物:特定防火対象物以外の防火対象物のことで、収容人数は多くても出入りする人が限られており、火災が発生した場合に避難が特定防火対象物に比べ比較的容易な施設のことです。

具体的には、共同住宅や学校、集会場、事務所、工場、倉庫などがあげられます。

※3

特定一階段等防火対象物:屋内に避難に使用できる直通階段が1つしかなく、地階または3階以上に不特定多数の人が利用する特定用途部分がある防火対象物です。

具体的には、劇場や映画館、キャバレー、ナイトクラブ、カフェなどが該当します。

上記の対象とならない建物の消防設備点検は、有資格者でなくても点検が可能となっていますが、設備の専門性が高いこともあり、専門の点検会社に依頼するケースが一般的です。

消防設備点検・報告の回数と罰則

消防設備点検の必要回数は、総合点検が1年に1度、機器点検は6カ月に1回となっています。

また、点検後には点検結果報告書を作成し、防火対象物の関係者が、管轄する消防署に提出する必要があります。

報告の頻度は、特定防火対象物か非特定防火対象物かによって異なり、点検のたびに報告する必要はありません。

対象となる防火対象物特定防火対象物非特定防火対象物
報告の回数1年に1回3年に1回

上記の点検・報告を怠った場合には厳しい罰則があります。

違反内容消防設備の設置命令に違反した場合消防設備の点検を報告しなかった、または虚偽の報告をした場合
罰則1年以下の懲役または100万円以下の罰金(消防法第41条)30万円以下の罰金または拘留(消防法第44条)

次に、防火対象物点検の概要をみてみましょう。

防火対象物点検の概要

2001年9月に発生した新宿区歌舞伎町ビルでの火災事故では、44名もの命が失われました。

多くの犠牲者が出てしまった要因は、階段に障害物が多数置かれていたため避難できなかったこと、消防設備を点検していなかったこと、防火管理者が選任されておらず、避難訓練が実施されていなかったことなどがあげられています。

このような惨事を繰り返さないために制定されたのが、防火対象物点検報告制度です。

防火対象物点検は、建物の防火管理が正常・円滑におこなわれているか、防火基準を満たしているかを点検します。

防火対象物点検の概要は下記のとおりです。

・防火対象物点検の点検内容

・防火対象物点検の対象となる建物

・防火対象物点検実施者

・防火対象物点検・報告の回数と罰則

・防火対象物点検の流れ

・防火対象物点検の表示制度

順に説明します。

防火対象物点検の点検内容

防火対象物点検の主な内容は次のとおりです。

・防火管理者を選任しているか、避難訓練を実施しているか・防火戸の開閉を妨げる障害物が置かれていないか・カーテンなどの防炎物品に防炎性能があることの表示がつけられているか・非常階段に避難を妨げる障害物が置かれていないか・消防用設備が設置されているか

防火対象物点検の対象となる建物

下記に該当する防火対象物(建物)の所有者または管理者は、防火対象物点検資格者に防火管理上必要な業務などを点検させなければなりません。

【防火設備点検が義務となる防火対象物】

1.特定防火対象物で収容人数が300人以上の建物(百貨店や遊技場、映画館、病院、福祉施設など)
2.収容人数が30人以上の建物で下記の要件に該当するもの・特定用途部分が地階または3階以上にあるもの(避難階は除く)・階段が1つしかないもの

出典:一般社団法人日本消防設備安全センター

防火対象物点検実施者

防火対象物点検は、防火対象物点検資格者により実施されなければなりません。

防火対象物点検資格者の条件は以下のとおりです。

・火災予防の専門知識や消防防災の分野における一定期間以上の実務経験を有する者

・総務大臣の登録講習機関である一般社団法人日本消防設備安全センターによる講習を修了した者

・上記講習後におこなわれる考査に合格し、安全センターが発行する免状の交付を受けている者

防火対象物点検・報告の回数と罰則

防火対象物点検は1年に1度実施し、その結果を管轄する消防署長に報告しなければなりません。

防火対象物点検の報告をしなかった、あるいは虚偽の報告をした者には、30万円以下の罰金または拘留が、その法人に対しては30万円以下の罰金が科せられます。

防火対象物点検の流れ

防火対象物点検の流れは以下のとおりです。

1.建物の所有者または管理者は、防火対象物点検資格者に点検を依頼します。

2.防火対象物点検資格者は、防火対象物点検を実施しその結果を報告書にまとめます。

3.建物の所有者または管理者は、防火対象物点検資格者が作成した報告書を管轄する消防長または消防署長に提出しなければなりません。

防火対象物点検の表示制度

防火対象物点検で一定基準をクリアした場合には、その建物内で「防火基準点検済証」を表示できます。

また、3年連続して点検基準をクリアしていると認められた場合には、以後の3年間は防火対象物点検と報告の免除を受けるための特例申請が可能です。

特例申請が認められれば「防火優良認定証」を表示できます。

このように、建物内に防火基準点検済証や防火優良認定証を掲示することによって、建物の利用者に安心感を与え、建物を管理する側への信頼をえることにつながるでしょう。

出典:一般社団法人日本消防設備安全センター

防火管理者の役割と概要

防火管理者とは、建物の所有者や社長などの管理権限者から選任を受け、その建物の管理的立場に立ち、防火管理をおこなう者です。

消防法で定める防火管理者講習の課程を修了しており、一定の資格を有しています。

防火管理者の主な役割は下記のとおりです。

・消防計画を作成し、それに基づいて避難訓練などをおこなう

・消防設備の維持・管理をし、消防署への届け出などをおこなう

・避難・防災上必要な構造および設備の維持管理

・火気使用に関する監督

・その他防災上に必要な業務

それぞれみていきましょう。

防火管理者が必要な建物

防火管理者が必要な建物の条件は以下のとおりです。

1.特定防火対象物において収容人数が30人以上かつ延べ面積が300平方メートル以上の建物・劇場や映画館、百貨店やスーパーマーケット、ホテルなど不特定多数の人を収容する建物・幼稚園や病院、社会福祉施設など災害時要援護者を収容する建物
2.非特定防火対象物において収容人数が50人以上かつ延べ面積が500平方メートル以上の建物・事務所や共同住宅工場など、多数の人が勤務、居住する建物

上記に該当する建物の場合には、防火管理者を選任する必要があります。

2種類の防火管理者講習

防火管理者講習には2種類あり、建物により必要な資格が異なります。

・甲種防火管理講習(2日間の講習)

・乙種防火管理者講習(1日の講習)

甲種防火管理者とは、用途や規模・収容人数にかかわらず、すべての防火対象物で防火管理者として認められる資格のことです。

これに対し乙種防火管理者は、選任できる防火対象物が小規模なものに限定されます。

消防設備点検と防火対象物点検の違いと必要性を理解して安心・安全を確保しよう!

消防設備点検と防火対象物点検は、いずれも火災時に被害を最小限に抑えるための重要な取り組みです。

消防設備点検は、設備が正常に作動するかを確認し、防火対象物点検は建物全体の防火安全体制をチェックします。

これらの点検は法律に基づいて義務化されており、怠れば罰則を受けるだけでなく、もしものときに被害を甚大にしてしまう可能性もあります。

この二つの点検の重要性を正しく理解し、定期的に実施することで、安心で安全な環境を守りましょう。

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