消防用設備等点検と報告義務とは?法定点検の項目や罰則について解説!

消防用設備は、消防法で点検や報告が義務づけられています。火災時に正常な働きができるよう、日頃からの点検が不可欠だからです。消防用設備の点検や報告に関する義務、怠った場合の罰則などについて詳しく知りたい方はぜひ最後までご覧ください。

消防用設備は、火災が発生した際に被害の拡大を防ぎ、人命や財産を守るために重要な役割を果たします。

日本では、この消防用設備が火災時に適正に稼働するように、定期的な点検・報告を義務づけています。

この記事では、消防法で点検や報告を義務づけている対象の建物や点検内容や報告の回数、点検や報告を怠った場合の罰則について解説します。

この記事を読んで、消防用設備の点検・報告や罰則などに関する認識を深めましょう。

消防用設備等の点検と報告の義務について

消防法17条の3の3により、消防設備の設置が義務づけられている防火対象物の所有者・管理者・占有者は、消防設備を定期的に点検し、その結果を消防長または消防署長に報告することが義務づけられています。

ここでは、消防設備の具体的な内容や、点検や報告が消防法により義務づけられている理由について説明します。

消防用設備等とは?何が点検対象になる?

消防用設備等とは、消防法で規定されている「火災を知らせる」「消化をおこなう」「避難を支援する」設備の総称のことで、すべてが点検の対象となっています。

消化・警報・避難の目的ごとに3つに大別され、それぞれ機能によって分類されています。

・消防設備:消火器、屋内消火栓、スプリンクラーなど

・警報設備:自動火災報知機、非常ベルや放送設備などを含む非常警報設備など

・避難設備:避難はしごや救助袋などを含む避難器具、誘導灯や誘導標識など

他にも、防火水槽などの消防用水や排煙設備など、消火活動上必要な施設が消防用設備に含まれます。

参考:総務省消防庁「消防用設備等の種類」

消防用設備等の点検が消防法により義務づけられている理由

消防用設備点検が消防法で義務づけられている理由は、いざというときに確実に作動し適正に機能が発揮できるかどうかを日頃から確認しておく必要があるからです。

設備自体は平時に使うことがないため、定期的にチェックをおこなわないと使用する際に問題なく稼働できるかどうか分かりません。

火災が実際に発生したときに、設備が適正に稼働しないと大惨事につながる可能性があります。

過去には、点検が必要であったにもかかわらず実施されていなかった施設で、多くの被害者が出る火災が発生した事例があります。

消防用設備等の点検および報告に関する義務の内容について

ここでは、点検・報告が義務づけられている内容について解説します。

・消防用設備等点検が義務づけられている建物

・義務づけられている消防用設備等点検と報告のスパン

それぞれ具体的に説明します。

消防用設備等の点検が義務づけられている建物

消防法では、以下の条件に該当する建物を対象としています。

・延べ床面積1,000平米以上の特定用途防火対象物

・延べ床面積1,000平米以上の非特定用途防火対象物で、消防長または消防署長が指定したもの

・延べ面積1,000平米以下の特定用途防火対象物のうち、直通階段が2つ以上設けられていないもの

点検が必要な対象となる建物建物の概要


延べ面積1,000平米以上の特定用途防火対象物
・不特定多数の人が出入りする建物、または火災などの災害時に円滑な避難が困難と想定される施設のことを指す
・具体的には、ホテルや百貨店、病院や社会福祉施設など


延べ床面積1,000平米以上の非特定用途防火対象物で、消防長または消防署長が指定したもの
・火災などの災害時に避難が比較的容易である建物が対象で、工場、事務所、マンションなどの共同住宅、学校や図書館、美術館が該当
・これらは特定用途防火対象物ではないが、それぞれの地区の消防長や消防署長が必要であると判断した場合に消防用設備等の点検が義務づけられる


延べ面積1,000平米以下の特定用途防火対象物のうち、直通階段が2つ以上設けられていないもの
・延べ面積が1,000平米以下の特定用途防火対象物であっても、屋内に直通階段が2つ以上設置されていない場合には、消防用設備等点検の実施が必要
・避難経路が1カ所しか存在しないため災害時の避難の際に危険が伴うと懸念されるため

義務づけられている消防用設備等点検と報告のスパン

点検には大きく分けて「機器点検」と「総合点検」の2種類があります。

点検の種類点検の内容点検のスパン

機器点検
外観の目視での確認、設置する場所の確認など、簡単な操作によるチェック半年に1回必要(1年に2回)

総合点検
設備を実際に作動させて総合的な機能をチェック1年に1回必要

半年に1回の機器点検と合わせて、1年に2回点検が必要です。

点検を実施し、報告をおこなわなければならない回数は、特定防火対象物が「1年に1回」、非特定防火対象物の場合は「3年に1回」です。

建物の用途や規模、構造などの条件により、定期的に点検の報告を提出しなければなりません。

ここ注意しておくべき点は、特定用途防火対象物の報告が年に1度、非特定用途防火対象物の報告が3年に1度となっていても、設備の点検は年に2度(機器点検は6カ月に1度、総合点検は1年に1度)おこなう必要があることです。

たとえば、3年に1度の報告が必要な非特定用途防火対象物の消防用設備に関して、保守管理者が勘違いして、報告の頻度と同様に点検も3年に1度しか実施しない場合には、明らかに違反となるので注意しましょう。

消防用設備等の点検は誰でもできる?

法律で定められている対象の建物(※)に設置されている自動火災報知機、やスプリンクラーなどの消防用設備等の点検は、消防設備士や消防設備点検資格者などの専門的な資格をもったものでなければおこなうことはできません。

※法律で定められている対象の建物

・延べ床面積1,000平米以上の特定用途防火対象物

・延べ床面積1,000平米以上の非特定用途防火対象物で、消防長または消防署長が指定したもの

・延べ面積1,000平米以下の特定用途防火対象物のなかで、直通階段が2つ以上設けられていないもの

該当しない場合には、資格がない人でも点検をおこなえますが、異常があった場合の改修や整備に関しては資格がないとできません。

また、消防用設備は技術的に特殊なものが多く、専門的な知識や技術がない人がおこなった場合、不具合に気づかず整備不良を見過ごしてしまうなどのリスクも考えられます。

従って、消防設備士や消防設備点検資格者などの資格者がおこなうことが推奨されています。

消防用設備等の点検項目

点検が必要な項目について解説します。

必要な対象項目は大きく分けて下記の2種類です。

・消防設備等の点検対象と内容

・防火対象物の点検対象と内容

順に説明します。

消防設備等の点検対象と内容

点検対象については、以下の4点が該当します。

点検の対象となる設備名   称点検内容

消火設備
消火器・屋内消火栓設備・スプリンクラー設備など非常時にきちんと作動するかどうか、交換の必要性がないかを確認

警報設備
自動火災報知機・ガス漏れ警報器・漏電火災警報器など警報設備が正常に鳴動するかどうかの確認

消防用水
ビルや工場に設置してある防水水槽、防水水槽がないときは、ため池や貯水池などを利用火災の初期消火用の水や、消防隊員による消火活動の際の水源が確保されているかの確認

消火活動上必要な施設
消防車を使用するための連結散水設備・連結送水管・排煙設備・無線通信補助設備などそれぞれの設備が、消防隊員が消火活動をおこなう際に問題なく作動するかどうかの点検

防火対象物の点検対象と内容

防火対象物には以下の設備が該当します。

対象となる設備設備の名称点検内容

避難設備
避難はしご・避難袋・緩降機などの避難器具、出入り口を灯す誘導灯や誘導標識避難設備を保管している周りに遮蔽物がないかどうか、有事の際に問題なく使用できる状態かどうかを確認

消防用設備等の点検・報告を怠った場合の罰則について

点検や報告を怠った場合の罰則について、曖昧な方は多いです。

罰則があること自体は理解しているものの、どのような場合に対象となるのか、また、どの程度の罰則を受けるのかしっかり理解している方は少ないでしょう。

点検自体の重要性は前述したとおりですが、怠った場合の罰則を理解しておくことも重要です。

消防用設備等点検に関して罰則の対象となりやすいケース

まずは、罰則の対象となりやすいケースをご紹介します。

・定められた期間に点検をしない

・虚偽の報告をする

・設置命令違反

 罰則の対象となりやすいケース具体例


定められた期間に点検をしない
半年に1度の機器点検、1年に1度の総合点検をおこなわないなど
「非特定防火対象物だから点検は必要ないと思い込んでいた」「いくつかのフロアーで点検したが全階でおこなわなかった」「一部の設備しかおこなわなかった」

虚偽の報告をする
報告のスパンが3年に1度である非特定防火対象物の場合、3年に1度だけ点検し、その他の期間の点検結果が問題無しと偽りの報告をするケース

設置命令違反
消防署から指摘があった指導に従わないケース(規定されている消火器の本数を満たしていない場合や、使用期限が過ぎているのに放置している場合など)

消防用設備等点検に違反した場合の罰則

次に違反した場合の罰則について解説します。

・点検報告義務違反に対する罰則

・維持管理義務違反に対する罰則

・設置命令違反に対する罰則

違反名違反内容消防法で定めている罰則対象となる消防法
点検報告義務違反点検結果の報告をせず、または虚偽の報告をした場合
・点検そのものが未実施・周期を守っていない・報告書に偽りがある・点検結果を周期に沿って報告しないなど
30万円以下の罰金または拘留(法人に対しても同様の罰金)

消防法「消防法第8条2の2の1

維持管理義務違反
消防設備の適正な維持にために必要な措置をしなかった場合
・老朽化している消火器を放置・誘導灯の電池切れ・電気故障などがある自動火災報知設備を修理せず使い続けるなど
30万円以下の罰金または拘留 消防法「消防法第17条の4の1および2
設置命令違反消防設備の設置命令に対して設置しなかった場合
・消火器などの設備を設置しない・火災予防や消防活動の妨げになるものを放置した場合など
1年位以下の懲役または100万円以下の罰金消防法「第5条の3

消防用設備等点検の罰則は強化された

2001年9月に発生した新宿歌舞伎町ビルで発生した火災により、2002年消防法の改正がおこなわれました。違反に対する罰則が強化され、罰金の上限が1億円になりました。

違反に対する罰則が個人だけでなく法人も対象となり、防火対象物のオーナーや管理権原者である建物の事業主には、違反した際の罰金が最高で1億円になる可能性があります。

たとえば、消防法第5条で規定されている「防火対象物に対する措置命令(改修・移転・除去・使用禁止・停止・制限等)」に従わなかった場合は適用される可能性があるため、これまで以上に点検に対する重要性を認識する必要があります。

消防用設備等点検の実施義務や費用を負うのは誰?

テナントビルやマンションのような建物に関して「点検の義務や費用の負担を負うのは建物の所有者なのか、入居者なのか?」といった質問をよく耳にします。

ここでは、点検の実施の義務や費用負担をするのは誰なのかについて解説します。

消防用設備等点検の実施や費用負担の義務があるのは「管理権原者」

消防法第17条3の3で定められている消防設備の点検・報告の義務を負うのは防火対象物の「関係者」となっており、少し曖昧に表現されています。

一般的に、点検の実施や費用負担の義務の対象者はこの関係者である「管理権原者」となっています。

管理権原者とは、防火対象物の管理について正当な権限を有する者で、具体的には建物の所有者や事業所の代表者などです。

また、マンションや事務所などのテナントビルの場合は、それぞれの所有者、入居者が管理権原者の対象となります。

費用の負担に関しては、建物の所有者が負担するケース、入居者が負担するケースとさまざまです。

現実には、建物の持ち主や管理会社が費用を出して、入居者が点検に協力するという場合も多々あります。

消防用設備等点検の義務者は賃貸契約時に定めるケースが多い

建物自体の維持や管理については、本来は建物の所有者が責任を負うのが一般的です。

しかし、設備の点検自体は、所有者と賃借人の両方が管理権原者である場合が多く、責任の所在が曖昧なケースも少なくありません。

そのため、賃貸契約の際に点検の義務者を決める場合もあります。

「点検の費用や責任は所有者側がもつので、そのかわり業者が点検に来たらなかに入れてください」という場合もあれば「費用も責任も入居者側が負担してください」というケースもあります。

今現在の契約内容を確認し、曖昧になっているのであれば、トラブルを防止するためにも、事前にルールを決めて契約に盛り込むことをおすすめします。

消防用設備等点検は入居者の協力が必要

点検に関しては、責任者や費用負担者を決めるだけでなく、入居者に周知を徹底することも重要です。

業者がテナントやマンションに点検訪問した際、留守のためにできなかったという話しはよく耳にします。

「部外者をなかに入れたくない」「面倒だ」などの理由で居留守を使われたり、点検を拒否されたりすることも少なくありません。

仕方がないと放置すると、機器などの不備に気づかず火災が起こって被害が拡大した場合、管理権原者が責任を問われる場合もあります。

点検の責任者が誰であっても、消防設備の点検は火災時の被害拡大や人命の救助のために必要だという認識をすべての入居者がもつことが重要です。

場合によっては、「不在時でなかに入り点検させてもらう」「点検を拒否したために損害が発生した場合は損害賠償の責任を負ってもらう」などのルール作りが必要な場合もあるでしょう。

入居者に対して、防火の意識をもってもらい協力を仰ぐことも重要です。

消防用設備等点検の重要性と内容を再認識して「もしものとき」に備えよう!

消防用の設備は、日頃まず使うことがないために意識が薄れがちです。

しかしながら、これまでに発生した火災で、決められた点検や報告をおこなわなかったために大きな被害に拡大した事例が少なからずあることも厳然たる事実です。

消防用設備の点検や報告に関して常日頃から重要性を認識して、もしものときに備えましょう。

点検や報告の必要回数や費用、その他気になる点があれば、お気軽にテックビルケアまでご相談ください。

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