赤外線外壁調査の現場に
同行してきました
先日、赤外線外壁調査の現場に同行してきました。調査を担当したのは社長の茶橋です。私は普段、現場の最前線にずっと張り付いているわけではないので、「赤外線で外壁の浮きが分かる」と言葉では知っていても、実際にどう撮って、どう判断しているのかは正直曖昧なままでした。
今回は、教科書のような解説ではなく、私がその日に見て・触れて・なるほどと納得したことを、できるだけそのまま書いていきます。これから外壁調査を検討される建物オーナーさんや管理会社の方に、現場の空気が少しでも伝われば嬉しいです。
1. そもそも、なぜ外壁を「赤外線」で見るのか — 調査の背景
今回お邪魔したのは、とある庁舎の外壁調査です。鉄筋コンクリートの建物は、年数が経つと外壁のタイルやモルタルが下地から少しずつ剥がれてきます。これがいわゆる「浮き」です。放っておくと、ある日ぽろっと剥がれて落ちる。これが事故につながります。
そこで建物には、建築基準法第12条に基づく定期報告という制度があります。一定規模以上の建物は、外壁の状態を定期的に調べて行政に報告しなければいけません。特に竣工や外壁の改修から年数が経った建物は、外壁を全面的に調べることが求められます。
昔ながらのやり方は、調査員が壁を一枚一枚叩いて音で確かめる「打診」です。確実なのですが、高いところは足場やゴンドラが必要で、お金も時間もかかる。そこで登場するのが赤外線です。カメラで壁の表面温度を写し、浮いている部分とくっついている部分の温度差から異常を見つける。足場を組まずに、離れた場所から壁の広い範囲を一気に調べられるのが最大のメリットです。
そして、現場で社長の茶橋からあらためて聞いて納得したのが、コスト面のメリットです。外壁の全面調査のために足場を組むと、建物の規模によっては数百万円かかることも珍しくありません。足場の代わりにロープでぶら下がって調べる「ロープアクセス工法(ブランコ)」という手もありますが、こちらは高所での作業になる分、どうしても安全性の面で不安が残ります。その点、赤外線調査は足場もロープも要らず、地上やドローンから安全に、しかも費用をぐっと抑えて調べられる。ここは依頼する側にとって、かなり大きな差になるはずです。
なぜ温度差で浮きが分かるのか
壁の内側にぴったりくっついたタイルは、建物本体に熱が逃げていきます。一方、浮いて隙間ができた部分は熱がこもりやすく、日光が当たると周りより温度が高くなります。この「ほんの数℃の差」を赤外線カメラが色で見せてくれる、というわけです。
2. 朝イチの作業は、壁に温度計を貼ることから
現場に着いてまず茶橋がやったのは、建物の東西南北、四面の外壁をぐるりと見て回ること。そして、それぞれの面に表面温度を測る温度計を取り付けていきました。いきなりカメラを構えるのかと思っていたので、これは少し意外でした。
理由を聞いて納得しました。赤外線調査は、壁にしっかり日が当たって温度差が出ている状態でないと、綺麗に浮きが見えません。だから「今この面はどれくらいの温度なのか」を押さえながら撮る必要がある。面ごとに日の当たり方が違うので、四面それぞれで条件を確認するわけです。
そしてこの日は梅雨の真っ只中。天気は晴れのち曇りで、とにかく安定しませんでした。太陽が顔を出したかと思えば、すぐ雲に隠れる。その繰り返しで、撮りたいタイミングで雲がかかると温度差が出ない。一日中、空を見上げては「お、出た」「あ、隠れた」と、ほとんどお日様とにらめっこです。それでもなんとか撮りきれたので、ほっとしました。
赤外線調査は「機材を向ければ撮れる」ものではなく、天候と日射条件にかなり左右される、ということ。特に梅雨や曇りがちの日は、撮れるタイミングを待つ忍耐勝負になります。日程に少し余裕をみておくと安心です。
3. 地上カメラとドローン、2台を使い分ける — 撮影の流れ
今回の庁舎は3階建て以下だったので、まずは地上に据えた赤外線カメラで撮影を始めました。地面からカメラを構えて、壁面をなめるように写していきます。これで大体の面はカバーできます。
ところが、2階部分が一段引っ込んだ造りになっていて、地上のカメラではどうしても角度が足りず、その面が撮れない。そこで出番になったのが赤外線カメラを積んだドローンです。ふわりと上げて、引っ込んだ壁面の正面までカメラを回り込ませる。地上から見えない場所もしっかり押さえられるのを見て、「これは足場いらずだな」と素直に感心しました。
最後に、外壁全体のひび割れ(クラック)を一つひとつ確認し、気になった箇所はその場でカメラに収めていきます。
四面の確認と温度計の設置
東西南北の外壁を見て回り、各面に表面温度計を取り付け。日射条件を押さえる。
地上の赤外線カメラで撮影
3階建て以下なので、まずは地上設置のカメラで届く範囲を撮影。
ドローンで死角を撮影
一段引っ込んだ2階部分など、地上から撮れない面はドローンを上げてカバー。
ひび割れの確認と記録
外壁のクラックを目視で確認し、該当箇所を撮影して記録に残す。
調査をしていると、現地の方が現場を確認しに来られました。せっかくなので、どうやって壁の浮きが分かるのか、温度差で色が変わって見えることなどを、お話ししました。「私もドローンを飛ばしたことがあるんですよ」など雑談も交えながら。こういうやりとりも、現場ならではの楽しさだなと思います。
4. 「赤い=浮き」とは限らない、が一番の学び
この日一番勉強になったのが、ここです。赤外線の画面では、浮いている部分は温度が高いので赤く映ります。だから「赤いところ=浮き」とつい思ってしまう。でも、そう単純ではありませんでした。
茶橋曰く、赤くても、その並びに規則性がある場合は要注意とのこと。浮き以外の事情で壁の温度が変わることがあるからです。実際にこの日も、外壁を塗り直した部分が、周りと違って赤く表示されていました。これは浮きではなく、塗装の状態の違いによるものです。ほかにも、壁の裏側に給湯器が設置されていたり、配管が通っていたりすると、その熱で外壁が温まって赤く出ることがある——と教わりました。つまり「赤い=必ず浮き」ではないわけです。
機械が赤く映したから即「浮き」と判定するのではなく、建物の造りや裏側の状況まで考えて読み解く。ここに経験と目利きが要るのだと、横で見ていてよく分かりました。
温度が高い=浮き、ではない
給湯器・配管・室内の熱源など、内部要因で外壁が温まっているケースがあります。温度分布に不自然な規則性があるときは、裏側の状況を確認しないと誤判定につながります。赤外線の結果は「読む人」次第、というのが現場の実感でした。
手の届く範囲は、やっぱり打診で確かめる
そして面白かったのが、手の届く範囲は今でも打診法で確認すること。専用の道具で壁を軽くたたくと、浮いている箇所は「カラカラ」と乾いた軽い音がします。くっついている部分の「コンコン」という詰まった音とは、はっきり違う。
私も実際にたたかせてもらいました。なるほど、音が軽い。そしてその同じ場所に赤外線カメラを当ててみると、ちゃんと温度変化が出ている。音で分かったことが、画面の色でも裏付けられる——この一致を自分の手と目で体験できたのは、本当に良かったです。赤外線と打診は、どちらか一方ではなく、補い合う関係なんだと腹落ちしました。
5. 高い場所のひび割れと、対象になる外壁の話
外壁を見ていくと、屋根のひさし部分などにひび割れが見つかることがあります。ただ、こういう高い場所は遠すぎて、肉眼ではどうしてもクラックがはっきり見えません。
そこで使うのが高精度の一眼レフカメラ。遠くから高画質で撮っておいて、報告書を作るときにぐっと拡大すると、ひび割れの形まできれいに分かるそうです。「届かないなら、撮って拡大すればいい」。言われてみればなるほど、ですが、こういう一手間に経験が出るんだなと思いました。
もう一つ教わったのが、外壁調査の対象になる壁の種類があるということ。タイル張りやモルタル仕上げなど、剥がれて落ちると危ない外壁が主な対象で、すべての壁が闇雲に対象になるわけではありません。帰り道、車から近くのビルやマンションを眺めながら、「あれは対象、あれはたぶん対象外」と、ちょっとした答え合わせをしながら帰社しました。普段何気なく見ていた街の景色が、急に違って見えてくるのが不思議でした。
赤外線と打診、それぞれの向き・不向き
一日同行して、両者のメリット・デメリットも整理できました。ざっくりまとめると、こんな感じです。
| 比較項目 | 赤外線調査 | 打診調査 |
|---|---|---|
| 調べ方 | カメラで壁の表面温度を撮影し、温度差で浮きを推定 | 壁を直接叩き、音の違いで浮きを判定 |
| 足場の要否 | 基本的に不要(離れて撮影できる) | 高所は足場・ゴンドラ・ロープが必要 |
| 得意なこと | 広い面を短時間で。高層・大規模の一次調査に向く | 浮きを直接確認でき、判定が確実 |
| 苦手なこと | 天候・日射に左右される。内部熱源による誤判定に注意 | 高所は手間とコストがかかる |
| 向いている目的 | 定期報告など、まず全体の状態を把握したいとき | 修繕を前提に、確実に範囲を確定したいとき |
茶橋も言っていましたが、修繕を目的とした調査なら、私たちは打診法をおすすめします。どこを直すかを確実に決める必要があるからです。一方で、まず建物全体の状態をつかみたい、足場を組まずに広く調べたいというときは赤外線が力を発揮します。どちらが上ということではなく、目的に合わせて選ぶ。これに尽きると思いました。
6. 現場に出て、あらためて思ったこと — まとめ
最後に、いち同行者として正直に感じたことを書かせてください。
外壁調査は、一定規模以上の建物ではおおむね10年に一度、必ず実施すべきものです。にもかかわらず、強い拘束力がないこともあって、いまだに実施されていない物件が少なくありません。「お金もかかるし、まあいいか」と後回しにされがちなのが実情です。
でも、この調査が求められるようになった背景には、外壁が落下して、実際に被害を受けた人がいるという重い事実があります。記憶に新しいところでは、2026年5月、大阪市中央区で商業ビルの外壁(タイル)が崩落する事故がありました。崩れた外壁の衝撃で道路標識のポールが倒れ、走っていたタクシーを直撃。運転手の方が脚にけがを負い、乗っていた女性客も病院に運ばれたと報じられています。
当事者の方が「ゴンゴンゴン、バラバラバラ」という音とともにタイルが降ってきた、と話していたそうです。私たちが現場で叩いて確かめている、あの「カラカラ」という浮きの音を思い出すと、他人事とは思えませんでした。タイル一枚でも、高いところから落ちれば人の命に関わります。調査は、そうした「もしも」を未然に防ぐためのものなんだと、現場で浮きを目の当たりにして、あらためて実感しました。
そして今回いちばん伝えたいのは、赤外線にも向き・不向きがあるということ。「足場がいらないから」という理由だけで選ぶと、目的に合わないこともあります。修繕を見据えるなら打診、まず全体を把握するなら赤外線。建物の状況と目的を踏まえて選ぶのが、一番遠回りしない方法です。迷ったら、ぜひ一度ご相談ください。現場を知っている人間が、正直にお答えします。
10年に一度が目安
一定規模以上の建物は、定期的な外壁の全面調査が求められます。未実施のままになっていないか、一度確認を。
足場いらずが赤外線の強み
離れた場所から広い面を一気に撮影。ドローンを併用すれば、地上から見えない死角もカバーできます。
結果は「読む人」次第
赤い=浮きとは限りません。内部の熱源を見抜けるかどうかに、経験の差が出ます。
目的で使い分ける
修繕前提なら打診、全体把握なら赤外線。組み合わせることで、ムダのない調査になります。
外壁調査、どちらで進めるか迷ったら
「うちの建物は赤外線と打診、どちらが合っているのか」「そろそろ10年経つけれど何から始めれば」——。
そんなご相談に、現場を知るスタッフが正直にお答えします。お見積りは無料です。