消防設備点検には機器点検と総合点検の2種類があります。この記事では、二つの違いや消防設備点検自体の概要と報告制度の内容について解説します。この記事を読むことで消防設備点検についての理解が深まります。
消防設備点検は、火災が発生した際に人命や財産を守るために重要である消防設備が、万が一のときに正常にその役割を果たせるように国が義務づけている点検です。
消防設備点検には「機器点検」と「総合点検」の2種類があります。
この記事では、
・消防設備点検の概要
・機器点検と総合点検の違いやそれぞれの内容
・点検から報告までの流れ
上記の3点について詳しく解説します。
消防設備点検について、理解をより深めたい方はぜひ最後までご覧ください。
消防設備点検について
消防設備点検は、火災が起こったときにその被害を最小限に抑えるために不可欠な消防設備の点検であり、国が義務づけている重要な点検です。
ここでは、改めて消防設備点検の概要は以下の2点です。
・消防設備点検や報告を怠った場合の罰則
・消防設備点検および報告が必要な防火対象物と点検実施者
順に解説します。
消防設備点検や報告を怠った場合の罰則
消防設備点検は、消防法によって義務づけられている重要な点検です。
当然、点検や報告を怠った場合には厳しい罰則があり、消防法第44条第11号により、違反者に対し30万円以下の罰金もしくは刑事罰が科されます。
これは、万が一の火災の際に被害の拡大を防ぎ、人命を守るための措置であり、規定された点検とその報告をおこなうことを促すために設けられています。
建物の所有者もしくは管理者は、当然これを厳守しなければなりません。
消防設備点検および報告が必要な防火対象物と点検実施者
点検の対象となる防火対象物(建物)は次のとおりです。
・延べ面積が1,000平米以上の特定防火対象物・延べ面積が1,000平米以上の非特定防火対象物で、消防長もしくは消防署長が指定する建物・特定一階段等防火対象物 |
【延べ面積が1,000平米以上の特定防火対象物】
特定防火対象物とは、不特定多数の人が出入りする建物、もしくは災害時に避難が困難と考えられる施設のことで、ホテルや百貨店をはじめ、病院や老人ホームなどの社会福祉施設も含まれます。
これらの特定防火対象物で延べ面積が1,000平米以上の建物は、火災が起こった際のリスクが高いため点検の対象となり、火災報知機やスプリンクラーなどが正しく機能するかなどのチェックをおこなわなければなりません。
【延べ面積が1,000平米以上の非特定防火対象物で、消防長もしくは消防署長が指定する建物】
延べ面積が1,000平米以上の非特定防火対象物で、消防長または消防署長が指定する建物も点検が必要です。
非特定防火対象物とは、特定防火対象物以外の建物で、事務所や倉庫・工場・学校などが該当します。
これらは、用途や構造が一般的な建物と異なる場合が多いため、「特別に注意が必要」と消防長や消防署長が判断した場合に点検の義務が発生します。
【特定一階段等防火対象物】
屋内に階段が一つしかなく、1階や2階以外の階に「特定用途」部分がある建物を特定一階段等防火対象物といい、火災が起こった際の危険性が高いと考えられるため、点検が義務づけられています。
※「特定用途」とは、主に不特定多数の人が利用する用途や、災害時に援護を要すると考えられる人が利用する用途のことで、興行場・百貨店・集会場・遊技場・店舗・学校・図書館などが対象となります。
また、上記の対象物に関しては、消防設備士もしくは消防設備点検資格者による点検が必要です。
上記以外の対象物に関しては、資格がない人でも点検できることになってはいますが、技術的に特殊なものが多いため、有資格者がおこなうことが望ましいとされています。
消防設備点検「機器点検」と「総合点検」の違い

消防設備点検には「機器点検」と「総合点検」の2種類があります。
それぞれの違いをみていきましょう。
機器点検は6カ月に1度!点検内容を解説
機器点検は半年に1度必要で、設備や機器が正しく配置されているか、機能に障害がないかといった項目を、主に外観の目視による確認や簡単な操作をおこなうことにより確認します。
たとえば消火器であれば、圧力が正常な範囲内か、標準の使用期限を超えていないかなどをチェックし、自動火災報知機については、実際に反応するかなどのテストをして必要に応じて調整をおこないます。
総合点検は1年に1度!点検内容を解説
総合点検は1年に1度必要で、消防設備の機能を総合的に評価するための点検であり、消火器・自動火災報知機、スプリンクラーなどすべての消防設備が対象となります。
設備が法令や規格に適合しているか、問題なく機能しているかなどを確認し、異常が見つかった場合にはその場で修理をおこなうか、その場での修繕が困難な場合には報告書に記載し、後日対応します。
機器点検は1年に2度実施する必要があり、そのうちの1度は「総合点検」の項目を加えておこない、この「総合」を加えておこなう点検を総合点検と呼んでいます。
つまり、「機器点検」と「(機器)+総合点検」が交互におこなわれるということです。
消防設備点検をおこなう主要設備と点検内容
消防設備点検が必要な主要設備と点検内容は以下のとおりです。
・自動火災報知器
・排煙設備
・火災通報装置
・避難設備
・非常警報設備
・非常電源設備
・ガス漏れ火災警報設備
それぞれ説明します。
自動火災報知器
自動火災報知器に関しては、受信機や発信機、煙・熱・光の感知器、音響装置、表示灯などが正常に機能するかの点検をします。
感知器をただ点検するだけでなく、適切な場所に感知器が設置されているか、感知障害がないか、空調設備がそばにないかなどもチェックの対象です。
排煙設備
排煙設備では、煙を屋外に出す設備が設置されている場所が適切か、また正常に作動するかをチェックします。
誘導灯・誘導標識
誘導灯や誘導標識が設置されている箇所が適切か、正しく点灯するかなどをチェックします。
切れている場合には球交換をし、予備電源接続状態(停電時)で点灯するかの確認も必要です。
最近の誘導等の電球は、省電力用のLEDタイプが主流になっています。
消防機関へ通報する火災報知設備
消防機関へ通報する火災報知設備に関しては、火災発生を試験的におこない、通話もできる火災通報装置が問題なく使用できるかをチェックします。
避難器具
避難はしごや救助袋、緩降機などが老朽化により劣化していないか、錆びついていないかなどを点検し、不具合があり危険と判断される場合には改修の提案をおこないます。
避難器具の点検の大半は、避難はしごのチェックが中心です。
主にマンションなどの共同住宅のベランダなどに設置されているため、蓋を開いてはしごを降ろし降下試験をおこないます。
避難はしごは埃がたまりやすいため、点検をしていないとはしご自体の動きが悪くなるため、定期的な点検が必要です。
非常警報設備
非常警報設備に関しては、自動火災報知機と同じように非常ベル、自動サイレン、非常放送設備などが正しく作動するかの点検・確認をおこないます。
非常電源設備
非常電源設備に関しては、火災時に停電となった場合に、消防設備に電力を問題なく供給できるかをチェックします。
たとえば、非常用電源設備の1つである非常用自家発電機については、試運転をして状態に問題がないか点検します。
ガス漏れ火災警報設備
ガス漏れ火災警報設備に関しては、危険なガス漏れを検知する感度が基準に適合しているかをチェックします。
ガス漏れ検知器は5年以上経過すると感度が不安定になり、何もない状態でも誤報が発生したりするケースもあるため定期的な点検・交換が必要です。
機器点検・総合点検の確認項目の具体例【避難はしご】
ここでは機器点検・総合点検の具体例として、避難はしごの点検を詳しくみていきましょう。
避難はしごの機器点検
マンションなどの共同住宅ではベランダに備え付けてあることが多い「避難はしご」の、機器点検の項目を紹介します。
・周囲の状況の確認・標識の確認・器具本体の確認・取付具およびハッチの確認 |
【周囲の状況の確認】
はしごが備え付けてあるところにスムーズに近づけるか、荷物などがはしごの出し入れを妨げていないか、操作をする場合に必要なスペースがあるかなど、いざというときにすぐに取り出せて使用できるかどうか周囲の状況をチェックします。
【標識の確認】
使用方法ラベルや標識がわかりやすく適正に表示されているかを確認します。
【器具本体の確認】
各部品が変形していないか、腐食や錆による欠損がないか、ゆるみがないかをチェックし、すべり止めの部分に異常がないか、可動部分が正常に動くかなどを確認します。
【取付具およびハッチの確認】
上蓋・下蓋の操作がスムーズにできるか、下蓋に雨水などがたまっていないかをチェックし、使用方法が適切に表示されているかも確認します。
このように、機器の配置状況・損傷状況・目視による外観からの判別をおこない、簡単な操作により確認できる事柄をチェックしていきます。
避難はしごの総合点検
総合点検では、機器点検に加えて、総合的に機能を点検します。
・開口部の開放がスムーズにおこなえるか、器具が適切に取り付けてあるかを点検する・実際に蓋を開いてはしごを降ろし降下試験をおこない、器具に応じた降下が問題なくスムーズにできるかを確認する・避難器具に応じた格納が適正にできるか点検する |
詳細な点検を定期的に実施することで、火災時に実際に消防設備が問題なく作動する状態を維持できます。
消防設備点検から報告までの流れ
消防設備点検を依頼し報告するまでの流れをみていきます。
それぞれの流れを確認し早めに点検の準備をおこないましょう。
1.消防設備点検業者に点検を依頼する
点検の時期が近づいてきたら、消防設備点検をおこなう業者から見積りを取り、点検を依頼しましょう。
業者を決める際は、実績と経験が豊富で安心できる業者を選ぶことが重要です。
2.資格をもった点検者が消防設備点検を実施する
点検を依頼する業者が決まったら、日時を決めて実際に点検してもらいます。
当日は常に点検に立ち会う必要はありませんが、質問などがある場合に連絡が取れるように待機しましょう。
3.点検担当者が作成した点検結果報告書を消防署または消防出張所へ提出する
特定防火対象物は年に1度、非特定防火対象物は3年に1度、管轄の消防署または消防出張所に、点検の結果報告書を提出する義務があります。
報告することはもちろんですが、報告と同時に、防火対象物の維持台帳にも、点検結果を忘れずに記録しておくことが大切です。
4.不備などがあった場合には速やかに対応する
もし、設備に不備があると判断された場合には、速やかに必要な改修や設備の入替えなどをおこなう必要があります。
消防設備点検に関するよくある質問
消防設備点検に関するよくある質問をまとめました。
・消防設備と防火設備の違いは?
・消防設備点検はなぜ義務化されている?
順にみていきましょう。
消防設備と防火設備の違いは?
消防設備は、自動火災報知機や誘導灯、屋内消火栓や消火器などで、火災の発生を知らせたり、初期消火をしたりするための設備です。
一方防火設備は、防火戸や防火シャッター、防火スクリーンなど、火災時に炎や煙が拡散することを防ぎ、避難経路を確保するために設置された設備です。
また、同じようによく混同されやすいのが、消防設備点検と防火対象物点検の違いです。
消防設備点検が消火設備や警報設備などのハード面での点検であることに対して、防火対象物点検は防火管理体制の構築や避難訓練などのソフト面での点検を指す点に違いがあります。
消防設備点検はなぜ義務化されている?
消防設備は平時に利用することはないため、いざというときに確実に正常な機能を発揮できるかどうかを日頃から確認しておくことが必要です。
過去には、点検や報告が未実施の施設で多数の被害者が出る火災が発生しています。
人命救助や被害の拡大を防ぐなど安全性を確保するために、国が対象となる建物の消防設備の点検・報告を義務づけているのです。
消防設備点検に関するお問い合わせやご相談はテックビルケアへお気軽にご連絡ください。

消防設備点検は、火災時に消防設備が人命や財産を守るために重要です。
この記事では、国が対象となる建物に対して定期的に義務づけている重要な点検であることや、点検の種類にも機器点検と総合点検の2種類があり、それぞれ周期や点検内容が異なることなどを解説してきました。
ただ、実際に自分の事務所や施設、あるいはマンションが、点検義務である防火対象物にあてはまるのかどうかよくわからない方も多いと思います。
また、今建物内にある消防設備にはどのようなものがあり、どんな状態なのか、機器点検や総合点検をおこなう際にどのような計画で具体的に何から始めればいいのか、あるいは今の保守点検費用が妥当なのかなど不安な点も多いと思います。
そんなときは、建築防災の専門家チームであり、消防設備点検6,000件以上の実績があるテックビルケアにお気軽にご相談ください。