病院の非常用発電機は、災害や停電時に患者や医療スタッフの命を守るための重要なインフラです。発電機が確実に作動するかを確認するためには、定期的な負荷試験が不可欠です。
本記事では、病院の非常用発電機の負荷試験について、必要性や実施内容、費用、業者選びまで詳しく解説します。
目次
病院は非常用発電機の負荷試験が、義務付けられている!
病院は消防法で「特定防火対象物」に分類され、非常用発電機の設置と定期的な負荷試験が法律で義務付けられています。負荷試験は、発電機が災害時に必要な電力を安定して供給できるかを確認するための重要な作業です。
病院以外にも、ホテルや百貨店、映画館など不特定多数が利用する施設や、高齢者施設など避難が困難な場所も対象です。これらの施設では、停電時に人命を守るため、法令に基づき負荷試験の実施が不可欠となっています。
特に病院では、生命維持装置や手術室の照明、エレベーターなど、多くの重要設備が電力に依存しているため、発電機の信頼性確保は極めて重要です。
そもそも負荷試験とは?
負荷試験とは、非常用発電機が実際に必要な電力を安定して供給できるかどうかを確認するための試験です。普段は使われない発電機も、いざという時に正常に動くかはわかりません。負荷試験では、スプリンクラーや消火栓ポンプ、照明などの設備に電力を供給したり、専用装置で疑似的に負荷をかけたりして、発電機の性能や異常の有無を点検します。
また、無負荷運転だけでは発電機本来の性能を確認できません。負荷試験を行うことで、燃料系統や冷却系統、発電能力などの不具合を早期に発見できます。病院の安全を守るため、定期的な負荷試験は欠かせません。また、負荷試験により発電機内部のカーボン除去効果も期待でき、機器の寿命延長にもつながります。
病院の非常用発電機の負荷試験が必要な理由
病院の非常用発電機の負荷試験が必要な最大の理由は、災害時に患者やスタッフの命を守るためです。停電時、スプリンクラーなどの設備が非常用発電機に頼っています。負荷試験を怠ると、いざという時に発電機が動かず、重大な事故や人命に関わるリスクが高まります。
また、消防法により定期的な点検が義務付けられており、法令違反となると罰則の対象となります。さらに、点検を怠ると保険が適用されない場合もあります。負荷試験を実施することで、発電機の不具合を早期に発見し、適切な整備や修理につなげられます。
医療機器の多くは電力供給が途絶えると患者の生命に直結するため、発電機の確実な動作確認は医療安全の根幹を成します。
負荷試験を怠った場合の罰則
負荷試験を怠ると、消防法の法令違反となり、30万円以下の罰金や拘留が科される場合があります。法人の代表者や防災担当者も罰則の対象となるため、責任は重大です。
さらに、点検報告を怠った場合や虚偽の報告をした場合も罰則が適用されます。事故発生時に保険金が支払われないリスクもあるため、法令遵守は必須です。負荷試験を確実に実施し、消防署への報告も忘れずに行いましょう。
また、法令違反が発覚した場合、病院の信頼性にも大きな影響を与え、患者や家族からの信頼失墜につながる可能性もあります。定期的な点検実施は、法的義務であると同時に、社会的責任でもあります。
参考:消防庁
病院の非常用発電機の種類
病院で使われる非常用発電機には、主にディーゼル式とガス式があります。どちらも停電時に必要な電力を供給しますが、設置場所や用途により選ばれます。発電機の種類によって負荷試験の方法や点検内容も異なります。負荷試験には「実負荷試験」と「疑似負荷試験」の2種類があり、それぞれにメリットとデメリットがあります。以下の表で比較します。
試験方法 | メリット | デメリット |
実負荷試験 | 実際の設備も同時に点検可能 | 停電が必要・費用が高い |
疑似負荷試験 | 停電不要・短時間・低コスト | 設備の同時点検は不可 |
現在では、病院の業務継続性を重視し、疑似負荷試験が主流となっています。
1.実負荷試験
実負荷試験は、非常用発電機を実際に稼働させ、病院内の消火栓やスプリンクラー、照明などの設備に電力を供給しながら点検する方法です。実際の停電を想定し、発電機が必要な電力を安定して供給できるかを確認します。
この方法では発電機だけでなく、非常時に稼働が必要な全設備も同時に点検できるため、総合的な安全確認が可能です。一方で、試験中は一部または全館停電が必要となり、医療現場への影響が大きいです。作業には多くの人員と時間(半日〜1日)がかかり、費用も高額になる傾向があります。
最近では、病院の業務に支障をきたさないように、実負荷試験の実施は減少しつつあります。ただし、総合的な設備点検ができる点では優れており、新設時や大規模改修時には有効な方法です。手術予定のない日や休日を利用して実施する場合もあります。
2.疑似負荷試験
疑似負荷試験は、専用の装置を使って発電機に30%の電力負荷をかけ、実際の設備を動かさずに発電機の性能を確認する方法です。停電を伴わないため、病院の業務に影響を与えずに短時間(2〜3時間)で実施できます。少人数で対応でき、費用も実負荷試験より安価です。
疑似負荷試験ではエンジン内部のカーボン除去効果もあり、発電機の寿命延長にもつながります。ただし、実際の設備が同時に点検できないため、設備側の不具合発見は別途点検が必要です。現在ではコストや手間の面から疑似負荷試験が主流となっています。
病院のように停電が難しい施設には特におすすめです。疑似負荷装置の技術向上により、実負荷試験に近い精度での点検が可能になっており、多くの病院で採用されています。
病院の非常用発電機の負荷試験の実施周期
非常用発電機の負荷試験は、原則として設置初年度から毎年実施が義務付けられています。2018年(平成30年)の法改正により、毎年「予防的保全策」を実施している場合は負荷試験の実施周期が6年に1回まで延長されました。予防的保全策とは、冷却水や潤滑油の定期交換、部品点検などを毎年行うことです。その結果、現場の負担が大きく軽減されました。
ただし、予防的保全策を実施していない場合は、従来通り年1回の負荷試験が必要です。点検内容や実施周期は、必ず最新の法令や消防署の指導に従いましょう。予防的保全策を選択する場合は、専門業者による適切な保全計画の策定と実施が重要です。
参考:消防庁
病院の非常用発電機の負荷試験の実施者
病院の非常用発電機の負荷試験は、専門知識と資格を持つ業者に依頼するのが一般的です。消防法により、点検は「消防設備士」または「消防設備点検資格者」が行う必要があります。
病院側で直接実施することは技術的にも法的にも困難なため、専門業者への依頼が必須となります。
消防設備士
消防設備士は、消防設備の設置や点検・整備を行う国家資格者です。甲種と乙種があり、病院のような大規模施設では甲種の資格者が求められる場合があります。消防設備士は発電機だけでなく関連する消防設備全体の点検も担当できるため、幅広い知識と技術を持っています。
資格取得には実務経験や試験合格が必要です。甲種消防設備士は工事から点検まで幅広く対応でき、乙種消防設備士は点検・整備に特化しています。病院の規模や設備に応じて適切な資格者を選ぶことが重要です。
消防設備点検資格者
消防設備点検資格者は、消防設備士の資格を持ったうえで、さらに点検に特化した講習と試験に合格した人です。第一種、第二種、特殊の区分があり、それぞれ点検できる設備が異なります。病院の非常用発電機の負荷試験では点検資格者が現場で法令に沿った点検を実施します。資格者が在籍する業者を選ぶと安心して依頼できます。
第一種は機械系設備、第二種は電気系設備を担当し、特殊は特定の設備に特化しています。病院では両方の資格者が連携して総合的な点検を行う場合が多いです。
病院の非常用発電機の負荷試験の費用相場
非常用発電機の負荷試験費用は、発電機の容量や設置状況、試験方法によって異なります。一般的に20kVA以下の発電機で15万〜20万円、230kVA以上の大容量機では30万〜50万円が相場です。以前は100万円を超える場合もありましたが、法令改正や機器の進化により費用は大幅に下がっています。
試験内容により追加費用が発生する場合もあるため、事前に見積もりを取り、総額や作業範囲を確認しましょう。修理やメンテナンスも一括で依頼できる業者を選ぶとトータルコストを抑えられます。費用は地域や業者によっても差があるため、複数社での比較検討が重要です。
病院の非常用発電機の負荷試験業者の選び方
負荷試験業者を選ぶ際は、施工実績や専門知識、対応の速さ、アフターサービスの充実度を重視しましょう。資格を持ったスタッフが在籍し、点検から修理まで一括対応できる業者が理想です。複数社の見積もりを比較し、信頼できる業者を選定してください。病院という特殊な環境での作業経験が豊富な業者を選ぶことが特に重要です。
施工実績の豊富さで選ぶ
業者選びでまず注目したいのは施工実績の豊富さです。多くの病院や大規模施設で負荷試験を行ってきた業者は、現場ごとの課題やトラブルにも柔軟に対応できます。実績が多い業者は作業の流れや安全管理も徹底しており、安心して任せられます。
公式サイトや見積もり時に過去の施工事例や実績を確認しましょう。経験豊富な業者は点検後の報告書作成や消防署への対応もスムーズです。特に医療機関での作業経験が豊富な業者は、病院特有の注意点や配慮事項を理解しており、安全かつ効率的な作業が期待できます。
専門知識を持った有資格者が在籍しているかで選ぶ
専門知識を持つ有資格者が在籍している業者は、法令に準拠した点検が可能です。消防設備士の資格を持つスタッフがいるか、事前に確認しましょう。有資格者が現場対応することで、発電機や設備の細かな異常も見逃すことが少ないです。
資格や研修体制が整った業者は最新の法令や技術にも対応できるため、安心して依頼できます。そのためには、見積もり時に担当者の資格や経験も確認してください。
複数の資格を持つスタッフが在籍している業者なら、さまざまな設備に対応でき、総合的なサービスが期待できます。
点検後の不具合改修・整備まで依頼できるかで選ぶ
点検で不具合が見つかった場合、すぐに改修や整備まで対応できる業者を選ぶと安心です。負荷試験だけでなく修理や部品交換、予防保全まで一括で依頼できる業者ならトラブル発生時も迅速に対応できます。
アフターサービスが充実している業者は長期的な設備管理にも強みがあります。点検から修理、報告書作成までワンストップで対応できるか事前に確認しましょう。部品調達ルートを持つ業者なら、故障時の復旧も早く、病院の安全性確保に貢献します。
スピーディーに対応してくれる業者を選ぶ
緊急時やトラブル発生時に迅速な対応ができる業者は、病院にとって大きな安心材料です。見積もりや現地調査、点検作業までスピーディーに進めてくれる業者を選びましょう。24時間対応や出張費無料など、柔軟なサービスを提供している業者もあります。
対応の早さは、病院の安全管理や業務継続に直結します。事前に対応体制や連絡方法を確認し、信頼できる業者を選定してください。緊急時の連絡体制が整っている業者なら、万が一の故障時も安心です。
病院の非常用発電機の負荷試験を実施する流れ
負荷試験の流れは、見積もり依頼から業者選定、申し込み、点検・工事、報告書の作成、不具合対応、消防署への届け出まで一連のプロセスで進みます。計画的に進めることで、スムーズな実施が可能です。
見積もり依頼と業者の比較を行う
まず複数の業者に見積もりを依頼し、費用や作業内容、対応スピードを比較します。各業者の実績や資格、アフターサービスも確認しましょう。見積もり内容が明確で追加費用の有無も事前にチェックします。
信頼できる業者を選定し、納得したうえで次のステップに進みます。見積もり時には作業時間や必要な準備についても詳しく確認し、病院業務への影響を最小限に抑える計画を立てることが重要です。
負荷試験の申し込みを行う
業者を選定したら、正式に負荷試験の申し込みを行います。試験日程や作業内容、必要書類などを業者と調整し、病院内の関係部署とも連携します。試験当日の流れや注意点も事前に確認し、スムーズな実施に備えます。
申し込み後は業者から詳細なスケジュールや準備事項の案内があります。病院スタッフへの事前周知も忘れずに行い、作業当日の混乱を避けることが大切です。
点検・工事~報告書の作成をしてもらう
負荷試験当日は業者が発電機の点検や必要な工事を行い、試験結果を記録します。点検後は詳細な報告書を作成してもらいます。報告書には試験内容や測定値、不具合の有無、今後の対応策などが記載されます。
報告書は消防署への届け出にも必要な重要書類です。発電機の状況や今後のメンテナンス計画について業者と情報共有することが重要です。
不具合が見つかった場合は改修を行う
負荷試験で不具合が発見された場合は、速やかに改修や部品交換を行います。業者によっては点検から修理まで一括対応できるため、迅速な対応が可能です。不具合を放置すると次回の点検時や実際の災害時に大きなリスクとなります。
改修後は再度点検を実施し、安全性を確認します。改修内容や費用についても事前に十分な説明を受け、病院側で承認してから作業を進めることが大切です。
報告書を受け取り消防署へ届け出る
点検・改修が完了したら、業者から受け取った報告書を所轄の消防署へ届け出ます。消防署は提出された報告書をもとに法令遵守や設備の安全性を確認します。報告書の提出は法的義務であり、怠ると罰則の対象となるため、必ず期限内に届け出ましょう。届け出後は控えを保管し、次回の点検時まで大切に管理することが重要です。
まとめ
病院の非常用発電機の負荷試験は、災害時の安全確保に不可欠な作業です。消防法により義務付けられ、定期的な点検と適切な対応が求められます。実負荷試験と疑似負荷試験にはそれぞれ特徴があり、病院では停電リスクの少ない疑似負荷試験が主流です。
費用や業者選びにも注意し、資格を持った専門業者に依頼しましょう。点検から報告書提出まで一連の流れを理解し、万全の備えを整えることが大切です。
非常用発電機の負荷試験や点検は、専門サービスの利用でより確実に実施できます。患者の安全と医療の継続性を守るため、適切な負荷試験の実施を心がけましょう。消防設備点検を検討している際は、株式会社テックビルケアまで、お気軽にお問い合わせください。