断水でスプリンクラーは止まる?地震後の消防設備点検

消防設備・防災

断水したら、スプリンクラーは止まるのか
地震のあと建物管理者が最初に確認すべきこと

公開日:2026年8月4日
カテゴリ:消防設備・防災
読了時間:約8分

2026年7月28日に発生した熊本地震では、宇城市と氷川町で最大震度7を観測しました。県内では一時8万戸近くが断水し、3万戸を超える停電も発生しています。被災された皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。

こうした状況を見て、「自分の建物の消防設備は、断水や停電のなかで本当に働くのだろうか」と考えた管理者の方も多いはずです。この記事では、断水と停電が消火設備に何をもたらすのかを設備のしくみから整理し、そのうえで地震のあとに管理者ご自身で確認できる項目をまとめます。私たちが日頃の点検で実際に目にしている不具合をもとにした内容です。

1. 断水しても、スプリンクラーはすぐには止まらない — 誤解されやすい「水源」のしくみ

まず、よくある誤解をひとつ解いておきます。

「断水したらスプリンクラーも消火栓も使えなくなる」と説明されることがありますが、これは正確ではありません。屋内消火栓設備やスプリンクラー設備の多くは、水道から直接水を取っているわけではないからです。

これらの設備は、建物に設けた専用の水槽を水源としています。地下ピットの消火水槽や屋上の高置水槽がそれにあたります。消火ポンプ(加圧送水装置)が水槽の水を汲み上げ、配管を通してヘッドや消火栓まで送る構成です。しかも一般的な湿式の設備では、配管のなかは常に水で満たされています。

つまり、水道本管が断水しても、水槽に水が残っていてポンプが動く限り、放水そのものは可能です。蛇口から水が出なくなったからといって、同時にスプリンクラーが機能を失うわけではありません。ここはまず押さえておいてください。

現場から

湿式スプリンクラーの配管は常時充水されているため、熱でヘッドが開けばその瞬間から放水が始まります。断水しているかどうかと、設備が作動するかどうかは、直接には結びついていません。

2. 効いてくるのは「補給が止まること」 — 水源水量が示す約20分という設計

では断水は無関係かというと、そうではありません。効いてくるのは、使った水が戻ってこないことです。

消火水槽は通常、水道から補給されています。断水中はこの補給が止まるため、水槽は使った分だけ減り続けます。そして消火水槽に蓄えるべき水の量、いわゆる水源水量は、いつまでも放水し続けることを想定した量ではありません。

消防法令が求める水源水量は、おおむね20分間の放水を見込んだ設計になっています。たとえば1号消火栓は放水量が毎分130リットル以上と定められ、水源水量は消火栓1個あたり2.6立方メートル。2,600リットルを毎分130リットルで割ると、ちょうど20分です。閉鎖型スプリンクラーも同じ考え方で、ヘッド1個あたり毎分80リットル、水源水量は1個あたり1.6立方メートル。これも20分で計算が合います。

消火ポンプ室で加圧送水装置と消火水槽の水位計を点検する消防設備士
消火水槽とポンプの状態確認。断水時は水位の推移が重要な情報になります

この20分という設計には、前提があります。その間に初期消火で消し止めるか、それが難しくても消防隊が到着して消火活動を引き継ぐ、という前提です。平時であれば妥当な想定でしょう。

問題は、大規模な地震のあとにこの前提が崩れることです。

消防隊の水利も、断水の影響を受ける

道路のマンホールや歩道脇にある消火栓は、上水道の配水管に直結しています。断水や水圧低下が起きれば、消防隊はここから水を取れません。防火水槽や河川、プールといった別の水利に切り替えることになりますが、その分だけ現場活動の立ち上がりは遅くなります。

加えて、道路の損傷や渋滞で消防車の到着自体も遅れます。同時多発的に通報が入れば、1件あたりに割ける部隊にも限りが出ます。

つまり大規模断水のさなかは、建物側の20分が尽きたあとを埋めてくれるはずの存在が、平時ほど当てにできない状況になります。設備が持つ時間そのものは変わらなくても、その20分の重みが変わるのです。

断水中に押さえておきたい考え方

断水しているあいだは、「初期消火で消し止められなければ、そのまま拡大しかねない」と考えて備える必要があります。消火器の配置を厚くする、火気を使う作業を制限する、夜間の巡回を増やすといった運用面の対応が、平時以上に効いてきます。

3. 例外は水道直結型のスプリンクラー — 小規模福祉施設が抱えるリスク

ここまでは、水槽を持つ一般的な設備の話です。ただし、断水の影響を直接受けるスプリンクラーも存在します。特定施設水道連結型スプリンクラー設備です。

これは延べ面積1,000平方メートル未満の小規模な社会福祉施設向けに認められた方式で、専用の消火水槽やポンプを設けず、建物の給水管からそのまま分岐して水を取ります。設備を大幅に簡素化できるため、グループホームや小規模多機能型居宅介護、小規模な有料老人ホームなどで広く採用されています。

水源が水道そのものですから、断水すればスプリンクラーからも水は出ません。断水に至らなくても、配水管の水圧が下がれば所定の放水性能を満たせなくなります。

該当する施設は、避難に介助を要する方が生活している建物でもあります。断水が発生した時点で、その施設の自動消火機能は当てにできない状態になっているかもしれない。この認識があるかどうかで、断水時の運用は変わってきます。夜勤の体制、火気の扱い、消火器の再配置、避難誘導の段取り。判断すべきことは少なくありません。

自分の施設がどちらの方式かは、消防用設備等点検結果報告書か設備図面で確認できます。分からなければ、点検を依頼している業者に聞けばすぐに分かります。

方式 水源 断水時の影響 主な採用先
一般的なスプリンクラー設備 専用の消火水槽+加圧送水装置 すぐには止まらない。ただし補給されないため、水源水量を使い切ればそこまで 事務所ビル、商業施設、病院、大規模福祉施設など
特定施設水道連結型
スプリンクラー設備
建物の給水管(水道本管) 断水・水圧低下でそのまま機能しない 延べ面積1,000㎡未満の小規模社会福祉施設(グループホーム等)

4. 停電でポンプが回らなければ、水があっても出ない — 非常電源という第二の生命線

水が確保できていても、ポンプが回らなければ放水はできません。

消火ポンプは電動機で駆動します。商用電源が止まれば、非常電源に切り替わらない限り動きません。消防用設備等の非常電源には、非常電源専用受電設備、自家発電設備、蓄電池設備があり、建物の規模や用途に応じてどれを備えるかが決まっています。

非常用自家発電設備に疑似負荷試験機を接続して点検する作業員
疑似負荷試験のようす。実際に負荷をかけて初めて分かる不具合があります

ここで効いてくるのが非常用発電機です。年に一度の点検では「異常なし」と記録されていても、実際の停電時に起動しない、起動しても負荷をかけた途端に停止する。こうした事例は現実に起きています。原因の多くは、長期間にわたって無負荷運転(空吹かし運転)しか行ってこなかったことによる不具合の蓄積です。エンジンを空吹かしするだけの点検では調子よく動いているように見えても、実際に消火ポンプといった負荷がかかった途端、運転がストップしてしまう事例もよく見受けられます。

消防法の点検基準では、自家発電設備の総合点検において負荷運転または内部観察等が求められており、条件を満たせば負荷運転の周期を6年に1度まで延長することもできます。ただしこれは、推奨交換期間に基づく部品交換などの予防的な保全策を計画的に実施している場合に限られる話で、「6年に1回でよくなった」と単純に読み替えると実態と食い違うことがあります。

弊社では、こうした予防的な保全とあわせて、疑似負荷試験機を使った負荷運転を1年に1回実施することをおすすめしています。疑似負荷試験機であれば建物を停電させずに実際の負荷を再現でき、6年に一度の負荷運転や内部観察だけに頼るよりも、不具合を早い段階で見つけやすくなります。万が一の停電時に消火ポンプなどの負荷がかかっても、途中で自家発電機がエンジンストップしてしまわないよう、1年に1回、疑似負荷試験機を使った負荷運転が必要です。

さらに地震特有の問題として、燃料タンクの損傷、配管のずれ、冷却水の漏れ、排気管の接続部の外れがあります。発電機本体が無事でも、こうした付帯部分が損傷していれば運転はできません。燃料の残量も確認が必要です。停電が長引けば、備蓄している燃料だけでは足りなくなります。

5. 地震のあと、外からは分からない損傷 — 管理者が最初に確認する10項目

地震後の消防設備で厄介なのは、損傷が外から見えないことです。天井裏の配管、受信機の内部、防火戸の建て付け。いずれも建物を普通に歩いているだけでは分かりません。次に火災が起きたときに初めて「動かなかった」という形で表面化します。

揺れが収まり、建物自体の安全が確認できたら、以下を順に確認してください。専門知識がなくても目視でできる範囲に絞っています。

1

消火ポンプ室と水槽

水槽まわりの漏水、水位計の指示、ポンプ制御盤に異常表示が出ていないかを確認します。

2

制御弁が開いているか

最重要項目です。漏水対応でバルブを閉め、そのまま失念する事故が実際に起きています。

3

天井のシミ・水滴

スプリンクラー配管の継手がゆるんだサインです。天井裏の漏水はシミが出るまで気づけません。

4

自動火災報知設備の受信機

電源灯の点灯、地区表示の残り、主音響を停止したまま放置していないかを確認します。

5

感知器の脱落

天井材が変形すると感知器が外れたり傾いたりします。落下していないか見上げて確認します。

6

防火戸・防火シャッター

躯体が歪むと閉鎖不良を起こします。動かせる範囲で作動を確かめ、周囲の障害物を取り除きます。

7

避難階段と通路

什器の転倒、荷物の散乱、扉の開閉不良。避難経路を実際に歩いて塞がっていないか確認します。

8

誘導灯・非常照明

点灯しているか、停電で蓄電池が放電しきっていないかを確認します。復電後は充電に時間を要します。

9

消火器

転倒や落下による変形、キャップのゆるみ、設置場所からの移動。倒れたままの消火器は戻します。

10

連結送水管の送水口

消防隊が使う設備です。落下物で埋もれていないか、破損していないかを屋外側から確認します。

とくに見落とされやすいのは「2番」です

地震後の漏水対応でスプリンクラーの制御弁を閉め、復旧作業の慌ただしさのなかでそのまま忘れてしまう。この状態は、その区画にスプリンクラーが設置されていないのと同じです。工事業者に任せきりにせず、自分の建物の制御弁が今どういう状態にあるのか——復旧工事が途中で止まっていないか、弁は開放されているか——を、施設運営責任者ご自身が把握しておくことが重要です。

自動火災報知設備の受信機の表示と感知器の作動状況を点検する消防設備士
受信機の表示確認。地震後は誤発報と実際の障害を切り分ける必要があります

6. 法定点検は「地震のあと」を想定していない — 臨時点検という選択肢

消防用設備等の点検は、消防法第17条の3の3に基づき、6か月ごとの機器点検と1年ごとの総合点検が義務づけられています。報告の周期は、不特定多数が出入りする特定防火対象物で1年に1回、それ以外の防火対象物で3年に1回です。建築基準法第12条に基づく定期報告も、それぞれ定められた周期で実施します。

これらはいずれも、平時を前提にした周期点検です。地震のあとに臨時の点検を義務づける規定は、消防法にも建築基準法にもありません。

だからこそ、抜け落ちます。「先月点検したばかりだから大丈夫」という判断が成り立ってしまうのです。しかし点検で確認したのは地震の前の状態であって、揺れたあとの状態ではありません。

震度5弱以上の揺れを受けた建物では、法定の周期にかかわらず臨時に点検を入れることをおすすめします。全設備を一巡させる総合点検でなくとも、水系設備の漏水確認と自動火災報知設備の作動確認だけでも、リスクの大半は拾えます。

そして、被災地から離れた地域の建物でも、ここまでの内容はそのまま次の地震への準備になります。とくに、自分の建物のスプリンクラーが水槽方式か水道直結型かの確認と、非常用発電機の負荷運転の実施状況の確認。この2つは、地震が起きてから調べたのでは間に合いません。

よくある質問

Q. 断水中でもスプリンクラーは作動しますか?

専用の消火水槽を持つ一般的な設備であれば、水槽に水が残っていて非常電源が確保されている限り作動します。断水と同時に使えなくなるわけではありません。ただし断水中は水槽への補給が止まるため、水源水量を使い切った時点で放水は続けられなくなります。一方、小規模社会福祉施設に多い特定施設水道連結型スプリンクラー設備は水道に直結しているため、断水すると機能しません。

Q. 自分の施設のスプリンクラーがどちらの方式か、どこで分かりますか?

消防用設備等点検結果報告書の設備種別欄、または設置時の設備図面で確認できます。延べ面積1,000平方メートル未満のグループホームや小規模多機能型居宅介護などでは、水道連結型が採用されているケースがあります。判断がつかない場合は、点検を依頼している業者に問い合わせれば即座に回答が得られます。

Q. 地震のあと、どのくらいの揺れなら点検を入れるべきですか?

明確な法的基準はありませんが、震度5弱以上の揺れを受けた建物では臨時点検をおすすめしています。配管の継手のゆるみや感知器の脱落、防火戸の閉鎖不良は、この程度の揺れから発生し始めます。まずは水系設備の漏水確認と自動火災報知設備の作動確認を優先し、必要に応じて範囲を広げるのが現実的です。

Q. 漏水でスプリンクラーの制御弁を閉めました。何に気をつければよいですか?

閉止した区画は、スプリンクラーによる自動消火ができない状態になります。修理や復旧工事を業者に依頼した場合でも任せきりにせず、どの弁が閉まっているか、工事が完了して弁が開放されたかを、施設運営責任者ご自身が把握しておくことが重要です。そのうえで、当該区画の巡回を増やす、火気使用を制限する、消火器を追加配置するといった代替措置を取ります。復旧後は弁を全開に戻し、開放状態であることを必ず目視で確認してください。閉め忘れは重大な結果につながります。

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テックビルケアは、消防設備点検・建築基準法第12条点検・非常用発電機の負荷運転試験を、大阪・東京の2拠点から全国対応で承っています。地震後の臨時点検はもちろん、水源方式や非常電源の確認だけのご相談も歓迎です。

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株式会社テックビルケア

大阪・東京の2拠点から全国対応する防災インフラの専門会社。40年以上にわたり、消防設備点検・ドローン外壁調査・非常用発電機負荷試験・建築基準法第12条点検などを手がけ、建物の「いざというときの安全」を支えています。

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