非常用発電機の負荷試験はいつから義務化された?
沿革と6年免除の条件・罰則を解説
非常用発電機の負荷試験は、1975年(昭和50年)の消防庁告示第14号を起点に義務化されており、2018年の告示改正により、条件を満たせば6年に1度の実施でよいことになっています。
「負荷試験はいつから義務なのか」「6年間免除される条件は何か」——非常用発電機を管理するビルオーナーや施設管理者の方から、こうしたご質問をよくいただきます。非常用発電機は、災害時に電力会社からの電源が止まった際、スプリンクラーや消火栓設備、自動火災報知機、非常用エレベーターなどに電源を供給する設備であり、人命の救助や被害の拡大防止に直結する重要な設備です。
本記事では、大阪・東京の2拠点で消防設備点検と非常用発電機の負荷試験に携わってきたテックビルケアが、負荷試験がいつから・どのような経緯で義務化されたのか、2018年の改正でどう変わったのか、怠った場合にどのようなリスクがあるのかを、法令の出典とあわせて解説します。
1. 非常用発電機の負荷試験はいつから義務化された? — 約50年前からの沿革
結論から言うと、非常用発電機の負荷試験は1975年(昭和50年)の消防庁告示第14号によって義務づけられました。総務省消防庁は、消防用設備等や特殊消防用設備等が火災時に機能を発揮できるよう、防火対象物の関係者に対して定期的な点検の実施と、その結果を消防署長等へ報告することを義務づけています(引用:総務省消防庁「消防用設備等点検報告制度について」)。
非常用発電機そのものの重要性は、告示以前からすでに認識されていました。1961年(昭和36年)には自治省令外六号の消防法施行規定に基づき、自家発電設備の基準がすでに定められています(参照:総務省消防庁「自家発電の基準(昭和48年消防庁告示1)|告示」)。そのうえで1975年10月16日付の消防庁告示第14号「消防用設備等の点検の基準及び消防用設備等点検結果報告書に添付する点検票の様式を定める件」第24項において、非常電源(自家発電設備)の機器点検・総合点検の細かな基準が設定されました(参照:総務省消防庁「消防用設備等の点検の基準及び消防用設備等点検結果報告書に添付する点検票の様式を定める件」/「非常電源(自家発電設備)の点検の基準及び点検票 別表第24及び別記様式第24」)。約50年にわたり、災害時に備えた負荷試験が重要視されてきたことがわかります。
設置初年度から義務であることに注意
非常用発電機は、設置初年度から負荷試験の対象です。「新品だから今年は不要」という猶予はありません。消防法や電気事業法に基づく通常の点検は無負荷運転であるため、実際に負荷をかけなければ機器を作動させる能力があるかどうかは確認できないためです。車で例えると、無負荷運転はエンジンをかけるだけのアイドリングテストのようなもので、実際に走らせなければタイヤやエンジンの異常はわかりません。現行の規定(1975年10月16日消防法告示第14号別表第24及び別記様式第24)でも、負荷試験は1年に1度、消防設備の総合点検時に行うと定められており、設置されたばかりの発電機も1年目から試験が必要です。
2. 2018年の点検基準改正 — 6年に1度への周期緩和と免除条件
2018年6月1日に公布された「平成30年消防庁告示第12号」により、それまで毎年必要だった負荷試験の周期が改定されました。毎年の予防的な保全策を行っていれば、負荷試験は6年に1度の周期にしてもよいというもので、製造から6年間、または過去に負荷試験を実施した日から6年間は試験が免除されます。
6年間の免除を受けられるのは、あくまで毎年の予防的保全策を欠かさず実施している場合に限られます。保全策を1年でも怠ると、免除の条件を満たせなくなる点に注意が必要です。
予防的保全策の内容
予防的保全策とは、非常用発電機の機能や性能に不具合が生じないよう予防するための対策です。具体的には、予熱栓・点火栓・冷却水ヒーター・潤滑油プライミングポンプなどが設置されている場合の1年ごとの確認や、潤滑油・冷却水・燃料フィルター・潤滑油フィルター・ファン駆動用Vベルト・冷却水等のゴムホース・パッキン類のシール材・始動用バッテリー等について、メーカーが指定する推奨交換年内での交換が求められます。
予防的保全策だけでなく消防点検報告書の提出も必要
負荷試験が免除される期間中も、消防設備の総合点検自体は毎年必要です。予防的な保全策を行った場合は、実施したことがわかる書類を消防点検報告書に添付する必要があります。別記様式第24「非常電源(自家発電設備)点検票」には、「当該点検項目の最終実施年月を備考欄に記入し、予防的な保全策が講じられている場合は、当該保全策を講じていることを示す書類を添付すること」と明記されています(出典:総務省消防庁「別記様式 非常用電源(自家発電設備)点検票」)。保全策は行っているつもりでも、書類が整っていなければ免除の証明にならないため、実務では書類管理まで含めて対応する必要があります。
制度改正の背景や、実際に「毎年」と「6年に1回」のどちらを選ぶべきかという実務上の判断基準については、非常用発電機の負荷試験は毎年必要?6年周期と最新通知を実務解説でさらに詳しく解説しています。
3. 負荷試験の方法 — 実負荷試験・模擬負荷試験・内部観察等
負荷試験と一口に言っても、実施方法は大きく3つに分かれます。それぞれの特徴を押さえておくと、自社の建物にどの方法が向いているかを判断しやすくなります。
| 方法 | 概要 | 停電の要否 |
|---|---|---|
| 実負荷試験 | 建物の実際の防災設備を動かして発電機に負荷をかける | 必要な場合が多い |
| 模擬負荷試験 | 専用の模擬負荷装置(ロードバンク)を接続して負荷をかける | 不要 |
| 内部観察等 | エンジン内部の部品状態を目視・計測で確認する | 不要(負荷はかけない) |
中でも模擬負荷試験は、建物を停電させずに実施できるため、病院や商業施設などテナントへの影響が大きい建物で広く採用されています。一方、内部観察等は負荷試験そのものの代替として認められていますが、実際に電力を出力させるわけではないため、6年に1回の負荷試験と組み合わせて運用するのが一般的です。
停電させずに試験したい場合は模擬負荷試験、建物の防災設備と連動した実際の稼働まで確認したい場合は実負荷試験が向いています。どちらが適しているかは発電機の設置環境によっても変わるため、迷った場合はお気軽にご相談ください。
実負荷試験と模擬負荷試験の詳しい違いや実施手順は、非常用発電機の実負荷試験と疑似負荷試験の方法と違いを解説!で解説しています。また、業種別の判断基準は非常用発電機 負荷試験の6年延長 vs 毎年実施 判断基準と業種別ベストプラクティスもあわせてご確認ください。
4. 負荷試験や点検を怠るとどうなる? — 事例と罰則
負荷試験や点検を怠ると、いざという時に発電機が作動せず、人命に関わる被害につながる恐れがあります。総務省消防庁は、東日本大震災の際にメンテナンス不足が原因で、23台の非常用発電機が始動しなかった、あるいは停止したと発表しています(出典:総務省消防庁「東日本大震災における自家発電設備のメンテナンス不良による不始動・停止台数」)。定期的な点検を行っていれば防げたケースがほとんどであり、日々のメンテナンスや点検がいかに重要かがわかります。
怠った場合の罰則
非常用発電機の負荷試験や点検を怠った場合には罰則があります。消防法第44条11号では、負荷試験や点検を怠る、あるいは虚偽の報告をするなどの行為に対して、建築物の所有者や管理者に30万円以下の罰金もしくは拘留の処罰を定めています。さらに消防法第45条3号により、建築物の所有者や管理者だけでなく、管理を任されている担当者にも最高1億円の罰金及び刑事責任が問われる可能性があります(参照:e-GOV法令検索「消防法」)。点検漏れに重い罰則があるのは、災害発生時に非常用発電機が正常に稼働することが、人命救助や災害の早期回復に直結するためです。
点検・負荷試験の実施状況にご不安がある方へ
「前回いつ負荷試験を実施したか記録が曖昧」「予防的保全策の書類が整っているか分からない」という場合は、罰則が科される前に現状を確認しておくことをおすすめします。お見積もり・お問い合わせからお気軽にご相談ください。
5. 費用の目安と非常用発電機の入れ替え時期
負荷試験にかかる費用の相場は、発電機の容量等によって異なりますが、1回あたり15万〜20万円程度が目安です。20kW以下であれば15万〜20万円ほど、230kW以上であれば30万〜50万円ほどが目安になります。試験方法によっても費用は変わるため、以下にまとめました。
| 試験方法 | 費用の目安 | 実施頻度 |
|---|---|---|
| 模擬負荷試験 | 15万〜50万円程度 | 6年に1回以上 |
| 実負荷試験 | 20万〜60万円程度 | 6年に1回以上 |
| 内部観察等 | 15万〜40万円程度 | 負荷試験を実施しない年に毎年 |
正確な費用は発電機の容量や設置環境によって変わるため、お見積もりで個別にご確認いただくことをおすすめします。
入れ替えのタイミングと注意点
非常用発電機は、製造から15〜20年程度で入れ替えを検討する必要があります。安定して稼働できる期間は20年程度といわれる一方、制御機能などは15〜20年ほどで不具合が生じる可能性が高まるためです。屋上などに設置されているケースが多く、入れ替え時にはクレーンを使用することがほとんどなため、車両の通行止めや交通規制、近隣住民への周知を含めた安全対策が欠かせません。設置から年数が経っている場合、周辺に新しい建物や電柱が増えて搬入ルートが確保できないケースもあるため、事前の現地確認が重要です。また、消防法の改正で必要容量の計算式が変わっていることもあるため、入れ替え時は新しい発電機に必要な容量もあわせて確認しておきましょう。
耐用年数の考え方
非常用発電機の耐用年数には2つの基準があります。減価償却を前提とした「税法上の法定耐用年数」は15年、実際に使用可能とされる「国土交通省官庁営繕所基準での耐用年数」は30年です。ただし屋外設置が多く、風雨や塩害で腐食が進みやすい環境では30年の使用は難しいケースが多く、耐用年数を超えると補修部品が手に入らず修理できなくなることもあります。15〜20年前後を目安に、入れ替え計画を立てておくことをおすすめします。
6. よくある質問
Q非常用発電機の負荷試験は誰でも実施できますか?
A誰でもできるわけではありません。総合点検における運転性能の確認(負荷運転または内部観察等)は、必要な知識及び技能を有する者が実施することが適当とされています(出典:総務省消防庁「消防用設備等の点検要領の一部改正について(通知)」)。消防設備士または消防設備点検資格者に加え、自家発電設備の点検整備に必要な知識・技能を有する者が行う必要があります。
Q模擬負荷試験と実負荷試験はどちらを選べばいいですか?
A停電させずに試験したい場合は模擬負荷試験、建物の防災設備と連動した実際の稼働まで確認したい場合は実負荷試験が向いています。病院や商業施設などテナントへの影響が大きい建物では、模擬負荷試験が選ばれるケースがほとんどです。
Q予防的保全策を1年でも怠るとどうなりますか?
A6年間の負荷試験免除の条件を満たせなくなります。免除を継続するには、毎年の予防的保全策を欠かさず実施し、実施したことがわかる書類を消防点検報告書に添付し続ける必要があります。
Q非常用発電機はいつ入れ替えるべきですか?
A製造から15〜20年程度が入れ替えの目安です。安定稼働の限界は20年程度とされる一方、制御機能は15〜20年ほどで不具合が生じやすくなるため、この期間を目安に計画的な入れ替え検討をおすすめします。
Q負荷試験や点検を怠った場合、どのような罰則がありますか?
A消防法第44条11号により建築物の所有者・管理者に30万円以下の罰金もしくは拘留、消防法第45条3号により管理担当者にも最高1億円の罰金及び刑事責任が科される可能性があります。
Q非常用発電機の耐用年数はどのくらいですか?
A税法上の法定耐用年数は15年、実使用の目安となる国土交通省官庁営繕所基準では30年とされています。ただし設置環境による腐食等を踏まえ、15〜20年前後での入れ替え検討が現実的です。
非常用発電機の負荷試験・点検、お任せください
義務化の経緯や6年免除の条件確認から、実負荷試験・模擬負荷試験・内部観察等の実施まで対応します。
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