非常用発電機が停電時に動かなかった事例
原因と、負荷試験で防ぐための対策
非常用発電機は、法定点検をクリアしていても、実際の停電時に電力を供給できなかった事例が国内で複数報告されています。近年は豪雨や地震による大規模停電が全国で相次いでおり、「自社の発電機は本当にいざという時に動くのか」という不安の声を、ビルオーナーや施設管理者の方からよくいただきます。
本記事では、過去に実際に起きた非常用発電機のトラブル事例を整理したうえで、「点検はしているのに動かない」という事態がなぜ起こるのか、その原因と、負荷試験・予防的保全による対策を、大阪・東京の2拠点で消防設備点検と非常用発電機の負荷試験に携わってきたテックビルケアが解説します。
1. 停電時に「動くはずの発電機」が動かなかった事例 — なぜ今、注目すべきなのか
非常用発電機(非常用自家発電設備)は、消防法や建築基準法に基づき、停電時にスプリンクラーや屋内消火栓、自動火災報知設備、非常用エレベーター、非常用照明などへ電力を供給するために設置が義務づけられている設備です。消防法上は年1回の総合点検の一環として負荷試験(実際に負荷をかけて発電機を作動させる試験)を実施することが定められており、条件を満たせば6年に1度の周期に緩和されます(詳しくは非常用発電機の負荷試験はいつから義務化された?沿革と6年免除の条件・罰則を解説で解説しています)。
ところが、法定点検をクリアしていた設備であっても、実際の災害・停電時に「起動しない」「起動したのに電力を送れない」という事態が起きた事例が、国内でいくつも報告されています。次章から、実際に報道・公表された事例を見ていきます。
2. 医療機関で起きた非常用発電機トラブル — 起動しても電気が届かなかったケース
非常用発電機のトラブルが最も深刻な影響につながりやすいのが、人工呼吸器や生命維持装置を使用する医療機関です。過去には、以下のような事例が報道されています。
2016年 岡山県の総合病院 — 原因不明の電源喪失
2016年11月、岡山県内の大規模な災害拠点病院で、原因不明の停電が発生しました。落雷や自然災害によるものではなかったにもかかわらず、集中治療室(ICU)や手術室を含む病院の約半分が電源を失い、非常用発電機も作動しませんでした。手術室に滞在していた複数の患者が一時的に照明や生体モニターを失う事態となりましたが、幸い医療事故には至らず回避されました。
2018年 大阪府北部地震 — 発電機は起動したが電気が届かなかった
2018年6月の大阪府北部地震では、大阪府内の医療機関で約3時間の停電が発生しました。このとき非常用発電機そのものは正常に起動していたにもかかわらず、施設内へ送電する装置に不具合があり、電力を送ることができませんでした。人工呼吸器や人工心臓を使用していた患者約70人に影響が及び、一部の患者や乳児が他院へ搬送されています。この施設では、電気事業法に基づく年1回の保安検査を複数年にわたり実施していなかったことも報道されました。
2018年の事例が示すのは、「発電機本体が起動すること」と「建物全体に電気が届くこと」は別問題だという点です。負荷試験は発電機本体の性能確認が中心であり、送電経路や配電盤まで含めた点検・保安検査を怠ると、起動しても電力が届かない事態が起こり得ます。
| 発生年 | きっかけ | 発電機の状態 | 主な原因 |
|---|---|---|---|
| 2016年 | 原因不明の停電 | 作動せず | 不明(原因調査中のまま公表) |
| 2018年 | 大阪府北部地震 | 起動したが送電できず | 送電装置の不具合/保安検査の未実施 |
3. 大規模災害・長期停電で見えた非常用発電機の弱点 — 燃料と稼働時間の壁
東日本大震災の被災地における医療施設を対象にした実態調査(学会発表資料)によると、自家発電設備そのものの設置率は当時すでに99%台と高い水準にありましたが、実際に確認すると燃料の備蓄不足に陥った施設が5施設、稼働可能時間が12時間以下だった施設が18施設あったことが分かっています。多くの発電機が「防災負荷用」として短時間の停電を想定した設計になっており、災害による長時間の停電までは想定していなかったことが背景にあります。
2019年の台風15号(房総半島台風)でも、同様の課題が浮き彫りになりました。千葉県を中心に最大約93万戸が停電し、復旧までの平均時間は約280時間(約11.7日)に及びました(出典:経済産業省資源エネルギー庁「「台風」と「電力」~長期停電から考える電力のレジリエンス」)。停電が想定を大幅に超えて長期化したことで、通信基地局などの非常用電源が燃料切れ等により維持できなくなり、通信障害が広範囲・長期間にわたって発生しました。
「発電機は正常に動いていたのに、燃料がなくなって止まった」というケースは、負荷試験だけでは見えてこないリスクです。停電の長期化を前提に、燃料の備蓄量と補給手段まで確認しておく必要があります。
4. なぜ「点検はしているのに動かない」状態になるのか — 主な原因4つ
ここまでの事例を踏まえると、非常用発電機が停電時に機能しない原因は、大きく4つに整理できます。
始動用バッテリーの劣化
発電機のエンジンを始動させるバッテリーが経年劣化していると、クランキング(始動回転)ができず、いざという時に起動しません。無負荷の外観点検だけでは劣化を発見しにくい部位です。
送電経路・配電盤の不具合
発電機本体が正常でも、切替盤や配電盤に不具合があると建物側に電力が届きません。発電機単体の負荷試験だけでなく、送電経路まで含めた確認が重要です。
燃料備蓄不足・長時間運転の想定外
短時間の停電を想定した燃料設計のまま、長期停電に見舞われると燃料切れで停止します。想定稼働時間と実際の備蓄量を照らし合わせておく必要があります。
法定点検・予防的保全の未実施
負荷試験や電気事業法上の保安検査を怠ると、不具合の発見が遅れます。6年に1度の負荷試験周期が認められるのも、毎年の予防的保全策をきちんと実施している場合に限られます。
5. 負荷試験と予防的保全で防げること — 「起動する」だけでは不十分な理由
負荷試験には、実際の電力負荷をかける実負荷試験と、模擬的な負荷をかける模擬負荷試験があります。無負荷でエンジンをかけるだけの動作確認では、実際に電力を必要な量だけ供給できるかどうかは分かりません。負荷試験を定期的に実施することで、バッテリーやエンジン内部の異常を、実際の停電が起きる前に発見できます。
テックビルケアは40年以上にわたり消防設備点検・非常用発電機の負荷試験に携わってきました。大阪本社・東京支社の2拠点体制で、発電機本体の負荷試験だけでなく、送電経路や配電盤の状態、燃料の備蓄状況まで含めて確認し、報告書として可視化します。消防設備点検・外壁調査・特定建築物定期調査もワンストップで対応できるため、建物全体の防災インフラを一括して管理したいオーナー様にもご相談いただいています。
6. 費用の目安と依頼の流れ — 何から始めればいいか
負荷試験の費用は、発電機の容量や試験方法(実負荷試験・模擬負荷試験)によって変動しますが、1台あたり13万円〜30万円程度が目安です。屋上に設置された発電機など、設置場所によって作業条件が変わる場合は、事前の現地調査で費用感をお伝えします。
お問い合わせ・ヒアリング
発電機の設置年数、過去の点検履歴、これまでの負荷試験の実施状況などをお伺いします。
現地調査・試験方法の選定
発電機の設置環境を確認し、実負荷試験・模擬負荷試験のどちらが適しているかをご提案します。
負荷試験の実施
実際に負荷をかけて発電機を作動させ、電圧・電流・排気温度などを確認しながら試験を行います。
報告書の作成・ご説明
試験結果を報告書にまとめ、消防点検報告書への添付資料としてもご活用いただけます。不具合があれば改善策もご提案します。
7. よくある質問
Q法定点検を毎年受けていれば、停電時に絶対に発電機は動きますか?
A点検・負荷試験の実施は、トラブルの可能性を大きく下げますが、100%を保証するものではありません。2018年の事例のように、発電機本体ではなく送電経路側に原因があるケースもあるため、負荷試験に加えて配電盤・切替盤の状態や燃料備蓄まで含めた確認をおすすめしています。
Q負荷試験と、通常の消防設備点検(機器点検・総合点検)は何が違いますか?
A機器点検・総合点検は主に外観や無負荷での動作確認が中心です。負荷試験は実際に電力負荷をかけて発電機を作動させ、必要な出力を発揮できるかを確認する試験で、総合点検の一環として年1回(条件を満たせば6年に1回)実施します。
Q6年に1回の負荷試験で本当に問題ないのでしょうか?
A6年周期が認められるのは、毎年の予防的保全策(バッテリーやフィルター類の交換・確認など)を欠かさず実施している場合に限られます。保全策を1年でも怠ると、免除の条件を満たせなくなる点にご注意ください。
Q負荷試験の費用はどれくらいかかりますか?
A発電機の容量や試験方法によって異なりますが、1台あたり13万円〜30万円程度が目安です。屋上設置など特殊な条件がある場合は、現地調査のうえでお見積りをお出しします。
Q設置から年数が経過した古い発電機でも負荷試験は受けられますか?
A問題ありません。むしろ設置年数が経過した発電機ほど、バッテリーや配線の経年劣化リスクが高まるため、負荷試験による確認の重要性が高まります。まずは現状の点検履歴をお伺いし、適した試験方法をご提案します。
非常用発電機の負荷試験・点検はテックビルケアにご相談ください
「点検はしているが、停電時に本当に動くか不安」という方は、送電経路や燃料備蓄まで含めた現状確認から始めましょう。大阪・東京の2拠点体制で、消防設備点検から非常用発電機の負荷試験まで、40年以上の実績でサポートします。
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